建設業の一人親方組合を社労士が作るには
建設業の一人親方が現場入場のために、労働保険に入らないといけないときがあります。大手ゼネコンの現場では、労働保険加入が必須なのだとか。
しかし、一人親方は労働者ではないので、普通は労働保険には入れません。しかし、業務の実態、災害の発生状況等に照らし、実質的に労働者に準じて保護するにふさわしい者ですので、特別加入の制度がもうけられています。
特別加入団体を通じて申し込む
一人親方が直接労働基準監督署に申し込むのではなく、「特別加入団体」という組織を通じて労働基準監督署経由で労働局長に申し込みます。
この特別加入団体は、認可制ではなく承認制となっておりまして、今回私が調べた限りでは、社会保険労務士になったばかりの1年目の社労士さんでも、特別加入団体「一人親方組合」を立ち上げることが可能ということでした。
建設業の一人親方組合、設立は簡単!? – 2020.08.18
私には、労働保険事務組合に入りたくても入れなかったという残念な過去があります。
労働保険事務組合に入れなくても、自分で作ればいいんじゃね!?と調べたところ、2年以上の実績、30社以上の組合員、財政的な基盤・・・等々、とてもじゃないけど社労士1年目には無理な条件が要件となっていましたorz
それなら特別加入団体だったら・・・・?と調べたところ、だいぶ分かってきましたので、私が理解できた限りをまとめます。
特別加入団体の法的根拠
まず基本となるのが、法的根拠です。特別加入団体の法的根拠は、労働者災害補償保険法第35条です。
第33条第3号に掲げる者の団体又は同条第5号に掲げる者の団体が、当該団体の構成員である同条第3号に掲げる者及びその者に係る同条第4号に掲げる者又は当該団体の構成員である同条第5号に掲げる者の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害(これらの者のうち、住居と就業の場所との間の往復の状況等を考慮して厚生労働省令で定める者にあつては、業務災害及び複数業務要因災害に限る。)に関してこの保険の適用を受けることにつき申請をし、政府の承認があつたときは、第3章第1節から第3節まで(当該厚生労働省令で定める者にあつては、同章第1節から第2節の2まで)、第3章の2及び徴収法第2章から第6章までの規定の適用については、次に定めるところによる。
労働者災害補償保険法第35条(太字筆者。各号省略)
太字にした通り、「承認」です。労働保険事務組合の場合は「認可」ですから、それよりかは気楽な印象です。
第33条というのは特別加入できるものを定めた条項です。
次の各号に掲げる者(第2号、第4号及び第5号に掲げる者にあつては、労働者である者を除く。)の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関しては、この章に定めるところによる。
1 (省略)
2 (省略)
3 厚生労働省令で定める種類の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者
4 前号の者が行う事業に従事する者
5 厚生労働省令で定める種類の作業に従事する者(以下略)
労働者災害補償保険法第33条(太字筆者)
厚生労働省令で定める種類の事業は、労働者災害補償保険法施行規則第46条の17に定められています。条文ばかりで目が疲れてきたので、条文引用はやめます。その代わり、厚生労働省作成リーフレットから読みやすそうなところを貼り付けておきます。
いろいろな事業が特別加入団体の対象となるものだなと新発見でした。このうち②の建設業の特別加入団体を作れたらいいな!と思っています。
特別加入団体を説明した基本リーフレット
労働局の徴収室の方に教えてもらったホームページはこちらです↓
特別加入についてはほぼこのページに網羅されているそうです。
特別加入団体に関するリーフレットもこのページにあります。
まずはこのページをよく読んで、分からないことがあればまた電話してくださいということでした。
一通り読んで、確かに社労士1年目でも決して難しくはないけど、いろいろな壁があると感じました。
特別加入団体の要件
特別加入団体の要件は次の5つです。
- 一人親方等の相当数を構成員とする単一団体であること。
- その団体が法人であるかどうかは問いませんが、構成員の範囲、構成員である地位の得喪の手続きなどが明確であること。その団体の組織、運営方法などが整備されていること。
- その団体の定款などに規定された事業内容からみて労働保険事務の処理が可能であること。
- その団体の事務体制、財務内容などから見て労働保険事務を確実に処理する能力があると認められること。
- その団体の地区が、団体の主たる事務所の所在地を中心として、別表※に定める区域に相当する区域を超えないものであること。
※別表より、群馬県の場合を抜粋
主たる事務所の所在地の都道府県が群馬県の場合・・・・主たる事務所の所在地の都道府県以外で特別加入団体が事務処理を行うことができる区域は、
福島県 茨城県 栃木県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 長野県
不明点は徴収室に電話して聞きました。
1.の「相当数」は具体的に何人と質問したところ、「最低でも10人はほしいところです」という回答でした。構成員として10人いるところ、特別加入するのがそのうちの5人くらいというのが最低ラインらしく、これはちょっとハードルが高いなと感じました。
4.の「財務内容」というのは、例えば資本金何円以上とか明確な基準があるのかと質問したところ、特に明確な基準はなく、申請段階では添付書類として財務諸表を求めたりすることはないという回答でした。ただし、特別加入者が保険料を滞納した場合に、特別加入団体が支払う義務を負うので、あまりにも滞納が続く場合には財務内容を調べさせていただくことがあるというような話でした。
以上、野口が2022年8月8日に群馬県労働局で調べた内容です。他県の場合は異なるかもしれませんので悪しからず。
特別加入団体の申請の仕方
特別加入団体「一人親方組合」を組織として承認してもらうために申請をするというよりは、まず特別加入したい一人親方が複数いて、その複数人を団体がとりまとめて申請を出す、ついでに組織としても同時に承認してもらうという形になっています。
書類の形式は様式第34号の10です。
↑こちらのサイトの「▽特別加入関係」というところにあります。
小さくて見えないと思うので、拡大します。
④添付する書類の名称の欄に二つの書類があります。
このうちの一つは、団体の定款等になります。団体の目的、組織、運営等を明らかにする書類が必要となります。Webにたくさん例がありますので、これを作るのはそれほど難しくはないかなあと思いました。
もう一つは、業務災害の防止に関する措置の内容を記載した書類です。これは業務災害を防止するために一人親方等の団体が講ずべき措置および一人親方等が守るべき事項を定めた書類だそうです。こちらは今日は調べきれませんでした。
まとめ
以上、今日取り急ぎ調べた限りをつらつら書いてみました。
社会保険労務士と行政書士のダブルライセンスの方で、建築業の知り合いがいらっしゃる方なら団体設立も夢ではないのかなと思いました。
私の場合はいかんせん、10人も構成員を集めるところがネックです。しかし、群馬県で調べたところ、実際に社労士さんが建設業の一人親方組合を作っている事務所をちらほら見つけることができました。私にも決して無理な話ではないと思いました。
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