裁判記録の閲覧
前橋地裁で裁判記録の閲覧をしました。気が付いたことをまとめます。
根拠
裁判記録を私のような部外者が閲覧することができる、法的な根拠は、民事訴訟法91条1項です。
何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。
民事訴訟法第91条1項
ただし、「訴訟記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない」という定め(同条5項)がありますので、裁判当日のように資料が出払っているときは、閲覧できません。
これ以外にも、”閲覧できない場合”があるようです(「法廷傍聴へ行こう」第5版46頁)。
必要なもの
閲覧申請に必要なものは、下記の4つです。
- 事件番号と当事者名(原告と被告両方)
- 認印(朱肉を使うもの)
- 収入印紙150円分
- 身分を証明するもの(運転免許証等)
今回私は認印を忘れて、いったん取りに戻る羽目になりました。
令和2年の押印廃止のときに、だいぶ行政文書の押印が廃止になっていたので、油断しました。
民訴法91条の申請書は、押印廃止の対象にはなっていませんでした。
そもそも、法務省で押印が廃止になった対象は、かなり少ないです。法務省における書面・押印・対面規制の見直しに係る関連情報
事件番号と原告と被告の氏名は、毎朝裁判の傍聴表を確認して、情報を集めるしかないです。
事件番号だけ知っていても、原告と被告名があいまいだと、閲覧申請できないかもしれません(窓口で確認されました。私はノートにメモしておいたので答えることができ、無事閲覧することができましたが、もし答えることができなかったらどうなっていたのでしょう?)。
申請書には目的という欄があって、「労働紛争の研究」と私は書きました。
記録の全部を閲覧したいときは、閲覧対象の欄に「記録全部」と書きます。
閲覧にかかる時間の欄は、分からなかったので空欄で出しました。それでも受理されました。
収入印紙は裁判所の中にある売店で購入できることが多いです。100円と50円の印紙を一枚ずつ買いました。
なお、150円の法的根拠は、民事訴訟費用等に関する法律別表第2です。
閲覧
私が閲覧した裁判所では、事務室の一角に小さな椅子と机があって、「そこに座って確認してください」と言われました。
私が申請したのが午前10時半過ぎでした。
「どれくらい時間をかけて閲覧してもよいのですか?」と聞いたら、昼休みの12時15分から13時までは事務室は閉鎖するため、いったん退室してもらうということをおっしゃっていましたので、もしかしたら1日中かけて閲覧することが可能なのかもしれません。
しかし、さすがに昼休みをまたいでまで閲覧したくはなかったので、がんばって閲覧して、昼前には終わらせました。それでも1時間半はかかりました。
前橋地裁では、メモをとることはOKでした(メモをとることがNGの裁判所もあるようです)。
写真やコピーをとることは、どこの裁判所でもNGです。
保存年限
裁判の記録の保存年限は、「事件記録等保存規程」で定められています。
私が見たい労働事件は「民事通常訴訟事件」に該当すると思うので、5年です。判決の原文は50年です。
5年・・・たったの5年・・・・意外に短くて、焦りました。
労働事件で有名な判例については、すでに事件記録が失われているということですね。
判決の原文だけ読んでも、細かい証拠を見なければ、賃金計算の端数処理や1週間の起算日をどの日にしたかとか、労務管理で一番知りたい情報は分からないってことが分かっていたのですが、じゃあ裁判所に行って裁判の記録を閲覧させてもらえばよいと思っていた私は甘かったです。
これから地道に裁判所に通って、せっせと傍聴するしかないのかなあ・・・・。
感想
裁判の記録を初めて閲覧しました。
かなりの個人情報が含まれており、「本当にこれ閲覧してよいのか?」と、かなりびくびくしながら閲覧しました。
机が一つしかなかったので、私以外にも閲覧したい人がきたらどうするのかな?と思っていたけど、基本的に私のような部外者が閲覧したがることはないようです。
1時間半事務室内にいたので、来客者数も分かるのですが、一人だけ、それも裁判所関係者だけでした。
前橋地裁という、地方の裁判所の特色かもしれません。もっと都会の裁判所であれば、たくさんの人が閲覧しに来るのかも。
記録閲覧は、私のように労働紛争を研究している者には、大変ありがたい制度です。
しかし、争っている当事者にとっては、好奇の目にさらされて、たまったものではないでしょう。
節度を守って、必要最小限、閲覧させてもらおうと思います。
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