ChatGPTに時間を盛大に無駄にされた話

ChatGPTに「論文を紹介して」と質問してはいけません。

発端

私は労働時間と賃金計算に興味がありまして、ずっと調べています。

最近、調べることに限界を感じていまして、読むべき本とか判例はだいぶ読んだつもりだけど、あとは学術論文を読むのが足りていないかなあ？と感じていて、ChatGPTに次のように質問してみました。

労働時間と賃金計算について詳しい論文をいくつか紹介してください。

これに対するAIの答えがこちら↓

以下に、労働時間と賃金計算について詳しい論文をいくつか紹介します。

1. 「長時間労働・過労死対策としての賃金計算」（竹内 哲也、横山 敏郎、2007年）

この論文では、長時間労働や過労死の問題を背景に、賃金計算において労働時間の適切な集計方法について検討されています。日・週・月単位の労働時間の集計方法に加え、休憩時間や深夜勤務などの特殊な労働時間についても詳しく取り上げられています。

2. 「超過勤務時間の集計方法と違法超過労働に関する判例」（小島 和夫、2013年）

この論文では、超過勤務時間の集計方法と、それに関連する違法超過労働の問題について検討されています。超過勤務時間の集計方法において、日・週・月単位の集計方法の違いや、休憩時間や深夜勤務の取り扱いについて詳しく説明されています。

3. 「残業時間の賃金計算に関する一考察」（川上 昭典、2015年）

この論文では、残業時間の賃金計算に関する問題点と、それを解決するための提言が行われています。残業時間の集計方法や、労働時間の補正に関する問題点について詳しく説明されています。

これらの論文は、労働時間や賃金計算に関する法律や判例に基づき、実際の現場で起こりうる問題点について詳しく検討されています。また、労働時間や賃金計算についての基礎知識や、各種計算方法についても解説されているため、労働者や雇用主の方々にとっても参考になると思います。

おお～！なんと、するするとそれらしい論文が出てくるではないですか！

やったー、嬉しい！とニコニコしながらすぐに国立国会図書館で検索した私。

あれ？ヒットしない・・・・。

検索方法が悪かったかなあ？とキーワードを変えていろいろ検索してみましたが、なかなかヒットしません。

論文を書いた人物についても、同名の理系の科学者や起業家がヒットしますが、労働法分野でそれらしい人物は見つからず・・・。

そこで、もう一度ChatGPTに質問してみました。

「長時間労働・過労死対策としての賃金計算」（竹内 哲也、横山 敏郎、2007年）が掲載されている雑誌の名前を教えてください。

これに対するAIの答えがこちら↓

「産業福祉研究」（第44巻、第3号、2007年）に掲載されています。

おおっ・・・と。ちゃんと掲載紙名まで把握しているのか。

そこで今度はその雑誌名で検索してみました。

あれ？それらしい雑誌はヒットしない・・・・。

この辺で、「あ・・・これもしかしてチャットボット・・・？」と思い始めました。チャットボットというのは簡単に言うとチャットするロボットのことで、私の中ではロールプレイングゲームにおけるNPC(Non Player Character)のようなものという位置づけです。要するに、人がしゃべっているかのように見せかけているだけで、中身のない会話をするアホなロボット。

しかし、掲載紙、掲載年まで丁寧にでっち上げてまで会話するとは・・・！

うそをつく？AI

その後もいくつか質問してみました。

「産業福祉研究」を発行している組織名を教えてください。

これに対するAIの答えはこちら↓

「産業福祉学会」が「産業福祉研究」を発行しています。

検索しましたが、産業福祉学会ではヒットしません。ますますあやしいです。

産業福祉学会の歴史を教えてください。今も存在している組織ですか？

これに対するAIの答えはこちら↓

産業福祉学会は、1952年に設立された日本の学術団体です。設立当初は、産業における保健、衛生、福祉に関する研究や技術の普及を目的としていましたが、現在では、労働に関する幅広い研究や教育を行う団体として活動しています。また、産業医や産業保健師、産業カウンセラーなど、職業的な健康や福祉に関わる専門家のネットワークとしても機能しています。

現在も産業福祉学会は存在しており、学術雑誌「産業福祉研究」の発行や、学会総会、学術大会、研究会などの開催など、活発な活動を行っています。

ほぉ・・・。今も存在しているとな？それでは住所を聞いてみましょう。

産業福祉学会の事務局住所を教えてください。

これに対するAIの答えはこちら↓

産業福祉学会の事務局の住所は以下の通りです。

〒141-0031 東京都品川区西五反田8-4-22 五反田MTビル4F

ただし、住所は変更される可能性があるため、最新情報は産業福祉学会の公式ウェブサイトなどで確認してください。

Googleマップで検索したところ、上記の住所に建物はありませんでした・・・。少しずれたところにいくつかビルはありますが、名前も住所も違うし・・・。肝心の、当該住所はマップの画像撮影時点では工事中だったようでパネルでおおわれていました。

しかし、AIが注意を喚起しているように、住所は変更される可能性があります。そこで、Webサイトについてもきいてみました。

産業福祉学会の公式ウェブサイトのURLをご存じでしたら教えてください。

これに対するAIの答えはこちら↓

産業福祉学会の公式ウェブサイトのURLは以下の通りです。

https://www.jswi.jp/

参考までに、産業福祉学会の公式ウェブサイトには、学会の概要や活動内容、研究発表会やシンポジウムの情報、出版物の案内などが掲載されています。

なんと！URLまであるのか？！ということで、早速クリックしましたところ・・・・↓

サイトにアクセスできませんでしたorz

なんっっじゃそりゃーーーー？！

気を取り直して今度は電話番号を聞いてみます。

産業福祉学会の事務局の電話番号は分かりますか？

これに対するAIの答えはこちら↓

産業福祉学会事務局の電話番号は、03-3832-2852です。

検索したけどヒットせず。

東京都品川区西五反田8-4-22の五反田MTビルは今もありますか？

これに対するAIの答えはこちら↓

調べたところ、東京都品川区西五反田8-4-22にある五反田MTビルは、現在も存在しているようです。ただし、最新の情報については確認が必要です。

ChatGPTは2021年までのデータが反映されているらしいので、この五反田MTビルが2022年に取り壊されていたらChatGPTが知らなくても仕方ないのかもしれません。しかし、それにしても組織名が全くヒットしないなんてことがあるでしょうか？

産業福祉学会の法人番号は分かりますか？

これに対するAIの答えはこちら↓

産業福祉学会の法人番号は、5010401012672 です。

早速国税庁の法人番号検索で確認したところ、

対象の法人番号は存在しないことが分かりました。

私：その法人番号は存在しませんよ。

AI：申し訳ありません、先程の回答に誤りがありました。調べ直したところ、産業福祉学会の法人番号は4000012065286です。お詫び申し上げます。

私：4000012065286も存在しない法人番号です。

AI：

申し訳ありません、誤った情報を提供してしまいました。正確な情報を再度確認し、お伝えします。

産業福祉学会の法人番号は、4000012065286ではなく、4000001032995です。前回の回答が誤っていたことをお詫び申し上げます。

もちろん、すべて存在しない法人番号でした！

なぜ存在しない論文を紹介したのか

そこでChatGPTがなぜ存在しない論文、存在しない組織、存在しない住所、存在しない電話番号、URLを紹介したのか疑問に思い、調べてみました・・・・ら。

すぐに理由が判明しました。Twitterのこちら↓のスレッドが詳しく説明しています。

このスレッドを読むと、”ChatGPT は、一連の単語に確率分布を割り当てる言語モデルに基”づいていて、”文の始まりが与えられると、次に来る可能性が最も高い単語を推測しようとする”ことが分かります。”文の開始を「予測」し、ドキュメント全体の一貫性を保証しつつ、シーケンス内の次の単語を予測するという考え方”で答えようとする・・・そうです。

なるほどね・・・・確率ですか。正確性ではないんですね。最も可能性が高い言葉を選んで、人間がしゃべる言葉になるようプログラムされているということですか。・・・がっかり。

まとめ

ChatGPTに学術論文を聞いてはダメです。

以上！