労働局のあっせん

労働紛争が起きたときに、会社がどう対応したらよいか、私の考えをまとめました。

いろいろな労働紛争がありますが、今回は労働者側から紛争を起こし、労働局にあっせんを申し立てた場合についてです。

労働局のあっせんは費用が無料ということもあり、他の労働紛争解決手段より多く利用されています。

いろいろな考え方がありまして、労働局にあっせんを申し立てられても、会社としては無視すればよい、あっせんへの参加は必要ないというようなことを言っているWebサイトもあるようです。

確かに労働局のあっせんは強制力はありません。労働者が申し立てても、会社側があっせんに参加しなければそれで終了です。

しかし、私の考えは違います。

労働局から連絡が来たら、ぜひあっせんに参加してください。

あっせんに参加した方がよい理由

理由は、三つあります。

スケジュール

一つ目の理由は、スケジュールに比較的余裕があることです。

労働局のあっせんでは、担当する紛争調整委員は基本的に1人なので、リスケが容易です。会社があっせんの開始通知を受け取ってから、特定社会保険労務士に代理を頼んだり、弁護士さんを依頼したりする、時間的余裕があります。

ところが、労働審判に持ち込まれると、リスケはほぼ不可能です。なぜなら、労働審判では構成員が3名いますので、3名の日程調整は難しく、裁判所はリスケに消極的となるからです。短い期間に弁護士さんを探して依頼しないといけません。

代理人を選ばず、会社側の代表本人が参加することも可能ですが、その場合であっても準備に相当な時間と労力がかかるでしょう。

短期解決

二つ目の理由は、短期解決を期待できる点です。

労働局のあっせんでは、もちこまれた相談の約半分が相手側が来ないまま終了するそうです。逆に言うと、残りの半分はあっせんが開催されているということです。そして、あっせんが開催された場合の合意成立の割合は、6割を超えます(令和3年度)。

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000959370.pdf

全体で見ると、「3割しか合意が成立していない・・・」とがっかりするかもしれませんが、これはあっせん開始の通知をもらっても参加しない企業がいるからです。参加した場合は約6割が合意が成立しています。

あっせんに参加し、合意できなければその時点で合意しなければよいのです。最初から参加しないのはもったいないと思います。

非公開

三つ目の理由は、非公開で行われるという点です。

労働審判も非公開ですが、民事訴訟となったら原則公開です。しかも訴訟の場合、結果が出るまで年単位です。毎回、私のような第三者が裁判の傍聴に来ます。裁判記録も第三者が閲覧可能です。

一方、労働局のあっせんでは非公開です。第三者が見ようとしても見ることはできません。

あっせんでは紛争の相手方と会うかもしれないから気まずいからいやだと考えるかもしれませんが、基本的にあっせんは個別に行われます。あっせん当日は労使それぞれ別室で待機し、呼ばれたら調整委員の方と話すだけです(個別の案件で、相手方と対面して話すよう調整されることもあります)。

同日開催ですから、廊下やトイレ、駐車場などで相手方と鉢合わせするなんてことがあるかもしれませんが・・・。

なお、裁判になったら、弁論のときはともかく、証人尋問のときにはいやおうなく相手方と顔をあわせる羽目になります。さらに、裁判は原則公開ですから、私のような第三者が傍聴席に座って聞いているなんてこともあります。

あっせんに向かない事例も

以上、あっせんに参加した方がよい理由を述べましたが、あっせんに向かない紛争もあります。

それは、相手方とこじれにこじれ、全く和解する余地がない場合です。

あっせんはあくまで合意成立を促すための場ですから、最初から和解するつもりがないのなら参加するメリットはあまりないと思います。