板ばさみの中間管理職

ある中間管理職から雑談めいた相談をもらいました。「残業命令って、していいの?」と。

36協定をかわしており、就業規則にも残業を命ずることがある旨書いてあれば問題ないはずですが、どうもそういうことを相談したい訳ではないようす。

よくよく話を聞いてみると、上からは売り上げを増やしたいからもっと部下たちに仕事をさせろという圧力がかかっているそうです。

本社で平均残業時間が月50時間なのに、その方の管理する部署では平均10時間程度におさまっているそうです。上からはもっと残業を増やせ、一人毎日2時間残業しろと言われたらしく。

一番少ない人で残業ゼロ、多い人でも月20時間程度でおさまっているようで、話を聞いていると「なんてホワイトな部署なんだ」と感動すら覚えましたが、実際にはその中間管理職の方がモーレツにたくさん残業や休日出勤をして仕事をこなしているのでした。その方が月に100時間近くやっているおかげで、その部署では部下の方たちがあまり残業をしないで済んでいるようです。

管理監督者は残業代を出さなくていいというのを悪用されているナーと感じました。

社労士として言えるのは、いきなり毎日2時間残業しろと言われても、部下の方たちからは反発されるだけだろうということと、毎日2時間残業したら、あっという間に特別条項が発動してしまうので、1日1時間程度に抑えるべきということでした。

残業しても効率は悪いことも説明しました。まともに仕事ができるのは起床から13時間までが限界であり、それを過ぎると人間の脳は意識レベルが落ち込むのだそうです。朝6時起床なら、13時間後というと夜7時です。その時間を過ぎても残業させるのは、酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下する(参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」)そうですよと説明しました。

特別条項が発動すると、年6回までしか使えないので管理が面倒になることも。特別条項の発動は、全体でではなく、一人ひとりについて管理が必要になることも説明しました。

「1日に1人2時間も残業させるくらいなら部署全体でトータルで月180時間くらいの工数になりますよね?1人1か月の労働時間数とほぼ同等です。人を一人新たに雇った方がよいと思いますよ?」と言うと、とっくに求人は出しているが、応募がないとのこと。

なるほど・・・いずこも今は人材不足のようです。