あの頃あなたはヒーローだった【二十歳前障害】

今日も昔話をします。私が国民年金の窓口係だったときの話です。

本を読んでひらめく女の人(いらすとやさんから)

二十歳前障害の障害基礎年金には所得制限がつく

先天性の病気等で障害をもつ方が、20歳になると障害基礎年金を請求することができます。

これは「二十歳(はたち)前障害」といって、拠出せずに年金をもらうことから、所得の制限がつきます。

所得が多いとはたち前障害は支給停止されてしまうのです。

説明が難しい

この制度の説明は大変難しく、理解してもらうのに一苦労でした。

所得制限がつきますといってもピンとこないようで、「うちの子は働けませんから・・・」と言葉少なくとまどったようにおっしゃる親御さんもいました。

いや、そうは言っても将来万が一所得が増え、年金が停止されたときに「聞いてない」となったら困るから、ちゃんと説明しようとする私。

うまく説明できなくて歯がゆかったです。

そんなときにですね、あの名作が出たのですよ、乙武さんの「五体不満足」という本です。

1998年、平成10年でした。

乙武さんの「五体不満足」

乙武さんの「五体不満足」と言う本は、大ベストセラーになりました。

私も当時買って読みました。大変面白い本でした。目から鱗と言いますか、蒙昧を啓いてもらったと言いますか。自分の価値観が随分偏っていたことを自覚できる本でした。「この本を読む限り、乙武さんは全然不幸ではない、むしろ楽しそう!」と思いました。

それで、窓口で二十歳前障害の所得制限について説明するときに、「あの乙武さんのような場合もありますから」と言うと、「なるほど」と納得してもらえたのです。

なんせ当時のベストセラーですから。

乙武さん自身が障害基礎年金の受給権者かどうかまでは知りませんが、もし条件に合致してるなら、確実に所得制限によって支給停止になっていたと思うのです。

彼にそんなつもりはなかったと思いますが、私にとっては大変よいアイコンとなり、説明がすんなりいくようになりました。

ありがとう、乙武さん。あの時あなたは確かにヒーローでした(私の中で)。

おおげさですかね?でも本当に助かりました。

今ならなんと説明するのだろう?と思います。街角の年金相談センターで障害年金を受け付けることもあるようです。そのときに、どう説明したら相談に来た方に納得してもらえるのか考えてしまいます。