時間外労働の罪数

以前、こういう記事を書きました。

労働基準法の罪刑は刑法の併合罪の適用があるから、たとえ30万円以下の罰金であっても、数が増えれば併合して大きな数字になるから怖いというようなことを言いたかった記事です。今読み返してみると、拙い文章だなあと我ながら恥ずかしいです。

この記事を書いた後で、もっとちゃんと労働基準法の罪数について書いたものを見つけたので紹介します。

電卓はよく使います。出先でPCがないときなど。この図は電卓のフリーイラスト(いらすとやさんから)

時間外労働の罪数については、通常、時間外労働は一日数名、何日かにわたって行われるものであるが、この場合、①労働者ごとに一日につき一罪とみるか、②労働者の数を問わず一日について一罪とみるか、③違反の日数を問わず労働者一人について一罪とみるか、又は④労働者数、違反日数を問わず、包括一罪とみるかが問題となる。この点について、最高裁第一小法廷は、①の立場をとる藪清紡織事件の大阪高裁判決(昭33(う)第1026号 昭33.12.2)に対する上告審(昭33年(あ)第2714号 昭34.7.2決定)において原判決を正当と認めており、この罪数の問題は一応解決されたものということができよう。大阪高裁の判旨は次のとおりである。

「労働基準法第62条(編注=昭和60年6月1日改正前の同法第62条)は年少労働者及び女子労働者の健康の保護向上をはかるためにこれらの者を一日のうち健康に有害な労働時間である同条所定の時間に使用すること(いわゆる深夜業)を禁止し、もって年少又は女子労働者の各自の福祉を保障しようとする規定であるから、もし使用者が右法条に反して、多数日にわたり多数の年少又は女子労働者を深夜業に使用した場合には特段の事情ある場合を除き、その使用日毎に各就業者個人別に独立して同条違反の罪が成立するものと解すべく、従って各就業者の数に応じてその就業日数に相当する数の併合罪として処断するを相当とし、これ等を包括して一罪が成立するものとなすべきではない。」

令和3年版労働法上 厚生労働省労働基準局編 労働法コンメンタール420p(太字とハイライトは筆者)

私が拙い説明をするまでもなかったですね。時間外労働の罪数は労働者ごとに一日につき一罪とみるそうです。就業者の数×その就業日数で罪数は計算します。

以上、何かのお役に立てば幸いです(本日オフにしたので短めです)。