就業規則の不備の例

就業規則にさらっと書いてあることが、実は不備だった、おかげで思いもかけない金額を請求されたという事例を見つけたので紹介します。

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就業規則の例

就業規則には次のように書いてありました。

職員が上司の指示、承認により時間外勤務をした場合においては、勤務一時間につき一時間当たりの算定基礎額に一○○分の一二五を乗じて得た金額とする。


大阪地裁平成9年(ワ)第693号

これを読んだだけでは何が問題なのか分からないと思いますが、実際の給与計算をする場面では毎回頭を抱えるところです。

問題点

この企業の所定労働時間は7時間30分でした。

なお、この企業では一か月もしくは一年の変形労働時間制を採用しているつもりだったんですが、協定書もなく、カレンダーも変形期間(のつもりの)開始後に配布するというていたらくでした。

カレンダー自体、労使で決めたものではなく、部長会議で勝手に決めていただけということで・・・。

判決

判決では、変形労働時間制は否定されました。

また、原告の中には管理監督者のつもりで被告(会社)が役職手当を支払っていた対象者もいたのですが、管理監督者性を否定され、被告は通常の労働時間制で計算した割増賃金を原告たちに支払う羽目になりました。

就業規則に、法定労働時間を超えた場合はと書いてありませんので、1日の所定労働時間である7時間30分を超えたところから計算した割増賃金を支払うことになりました。

一番多い人で538万円ほど、計6人に対して賃金をさかのぼって支払うことになり、かつ付加金命令も出てしまいましたので、会社としては散々な結果になりました。

なにが不備だったのか

就業規則の何が不備だったのかというと、割増賃金を支払うのが所定労働時間を超えたところか法定労働時間を超えたところか、明確にしていなかった点です。

上司が指示し承認したら支払うとしか決めていませんので、所定超で即支払うことになりました。

もともと所定労働時間を超えたら割増賃金を支払うつもりでしたらあの条文で問題ないと思いますが、そうでないなら見直すべきでした。

まとめ

以上、実際の判例から、就業規則が不備になる事例を紹介しました。

何気ない書き方をしてあると気が付かないかもしれません。自社の就業規則に不安があるなら、就業規則の専門家である社会保険労務士にご相談ください。

ここまでお読みくださりありがとうございました。