15分単位の労務管理の根拠となる通達がかつて存在していた話

以前、15分単位の労働時間管理について記事にしたことがあります。いったいなぜこのような15分単位での労務管理が広まったのか分からなかったのですが、本を読んでいて「これだ!」という答えが見つかりましたので、紹介します。


昭和23年2月20日基発297号(すでに廃止)

念のため言っておきますが、この通達はすでに廃止されています。

【賃金の計算方法】

問 賃金の計算は本来は正確精密を原則とするが、計算の簡便上三十分単位未満の取捨を認め、この際労働者の責に帰すべき遅刻、早退等は事業主の有利、然らざる場合は労働者の有利となる様取捨するものとし、例えば十五分の遅刻に対して三十分迄を切捨て、又十五分の残業を三十分の残業とするよう指導してよいか。

答 見解の通りであるが、端数の取捨について労働者の不利となる場合には法第九十一条の減給の制裁として取扱わなければならない。

労働省労働基準局監修「労働基準法解釈総覧」昭和35年(1960年)1月20日発行219頁


原本は入手できなかったので、図書館にあった古い解釈総覧を探してきて見つけました。

図書館で借りた労働基準法解釈総覧(右は奥付)

現在生きている通達は次のとおりです。

昭和63年3月14日基発150号(現存)


【賃金計算の端数の取扱い】

賃金の計算において生じる労働時間、賃金額の端数の取扱いについては次のように取り扱われたい。

一 遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理

五分の遅刻を三十分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(二十五分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法である。なお、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、法第九十一条の制限内で行う場合には、全額払の原則には反しないものである。(以下略)

厚生労働省労働基準局編「労働基準法解釈総覧」改訂16版262頁


これは現在も有効な通達でして、検索するといくらでもヒットする(ただし全文は情報公開請求しないとみることができない)のですが、今手元にあるのが解釈総覧改訂16版だったので、それをテキストにしました。

感想

社労士の勉強をしていると1分単位が当たり前なので、古い就業規則になぜ15分単位のカットが書いてあるのか不思議でしたが、昭和23年に通達が出ていたのですね。

昭和23年から昭和63年まで、40年近くこの通達が通っていたのであれば、年配の経営者が「15分単位でいいはずだぞ?!」とおっしゃる意味がようやく分かりました。

昭和63年にそれまでの通達が廃止になり、新しい通達が出てかれこれ34年経ちます。そろそろこの新しい方の通達が社会に浸透してもよいのではないかと思うのですが・・・。

まとめ

以上、15分単位の労務管理の根拠となった古い通達(現在は廃止)を紹介しました。

何かのお役に立てば幸いです。

ここまでお読みくださりありがとうございました。