梅崎春生「飢ゑの季節」を読む【共通テスト】

今年共通テストの国語で出題された梅崎春生「飢えの季節」を読みました。

全部を読む贅沢

昔受験生時代、いろいろな試験を受けました。

そのとき、国語の試験で何が辛かったかって、問題に出てくる小説とか評論がおもしろそうなことです。

どんなにおもしろそうでも、全部が載っていることはほとんどなくて、途中だけです。

それが私にはとてもいけず(いじわる)に思えました。

当時は受験生だから勉強に忙しく、本を満足に読むことができませんでした。

大学に受かったら読もう、今は我慢だと思っていました。

そして今、悠々と読んでいる自分がいます(満足)。

共通テスト(これまではセンター試験)の問題が発表されると、国語はチェックしています。

試験問題自体は解きません。問題文の評論と小説だけざっと読んでいます。おもしろそうだったら原本に当たって読んでいます。

これは最高の贅沢だと思うんですよね(個人の感想です)。受験生時代にはなかった心の余裕といいますか、社会人ならではの特権といいますか・・・。

梅崎春生

今年は梅崎春生「飢えの季節」が出題されていました。

私はこの作者を全然知りませんでした。

調べてみたら私が生まれる前にすでにお亡くなりになっている方でした。

小説もかなり古い作品でして、今回国立国会図書館のデジタルで文壇という雑誌に掲載されていたものを読みました。

雑誌冒頭に井伏鱒二さんの詩が掲載されており、時代を感じます。

旧漢字体ですので読みにくいかもしれませんが、それはそれで味わいがあって私は好きです。

感想

まずこれだけは言いたいです。この小説を読むと、おなかが空いてどうしようもないです。

主人公がずっとおなかをすかせている話です。

戦後の食糧難とはこういうことだなと思いました。

私は社労士なのでどうしても1日3円の給料が気になってしまいます。

これ↓で調べてみたら、1948年(S23)の3円は、2019年(R1)の30.85円にあたるそうです。

日本円消費者物価計算機

https://yaruzou.net/hprice/hprice-calc.html

今の金銭に換算して1日30円か・・・。そりゃ、辞めたくもなりますね。作中、3円で外食ができる描写がありますが、薄いみそ汁と沢庵だけ、3分もあれば食べ終わるので2食分食票を買わないとおなかいっぱいにはならないという内容でして、当時の食糧難がいかに過酷だったかうかがえます。

日本で最初の最低賃金である静岡県缶詰製造業最低賃金(1956年)が日額160円でした。

1956年というと、小説の舞台となった1948年から8年後ですから単純に比較はできませんが、それにしても日額3円というのは破格に安かったと思います。

あと不当労働行為についてもさらっと書いてありました。会長が激怒して労働争議を起こした二人をクビにしたとありました。

すでに労働組合法があったはずですが、十分に機能していなかったのだろうなと思いました。

小説なので実際にあった話ではないはずですが、この小説は自伝的小説という位置づけらしいので、似たようなことがあったかもしれないと思うと切ないです。

話の中で、40代の老兵、32、3歳の老嬢というパワーワードが出てきて、もうすぐ50歳の私は軽くショックを受けました。当時の平均寿命が56歳ということなので、30代、40代は老年者扱いなのですね。

共通テストの問題を作る人はどうやってこういうおもしろい小説などを探してくるのでしょうね。これからもウォッチングしていきたいです。