就業規則の二つの方向性

さまざまな企業の就業規則を見ていると、大きく二つの方向性があることに気が付きます。

それは、会社の義務を記述してあるかどうかです。

会社の義務を書いてある就業規則は、厚生労働省が作成したモデル就業規則をベースとしたものが多いようです。

会社の義務を書かず、一貫して労働者の義務や権利について書いてある就業規則は、社労士や弁護士などの専門家が関わって作ったものが多いようです。

会社の義務を書かず、一貫して労働者向けに特化して書かれた就業規則というのは、私は勝手に石嵜派と呼んでいます(弁護士の石嵜先生が書かれた就業規則の名著があるのですが、その本がこのポリシーで書かれているからです)。

石嵜派の方が、ちゃんと法律を吟味し、自社に合った形でどう就業規則を作っていくか考えられているようで、私は好きです。

一方、厚生労働省のモデル就業規則というのは、やはり行政が作ったものですから、公平になるよう考えられているのでしょうね。労働者に偏らず、会社側の義務についても言及することが多いです。

しかし、「就業」規則ですからね^^;

労働者が労働するにあたってのルールを書いたものの中に、使用者側の義務を書くのはちょっと方向性が違う気がしています。

もちろん書いてもいいのですが、書かなくてもいい訳です。その辺は自由です。

しかし、就業規則に書いたからには会社は守らないといけません(労働基準法第2条2項「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」とありますので。これに違反しても罰則はないのですが、罰則がないからといって会社(と労働者)が守らなくていい理由にはなりません)。

逆に、会社の義務を就業規則に書かなかったら守らなくてもいいのかというと、そんなことはなくて、ちゃんと法律でさまざまな義務が会社に課されている訳です。

例えば、ある一定の規模の会社は毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務があります。このことをわざわざ就業規則には書きませんが、時期が来たら報告はしますよね。

そんな風に、就業規則に書いてなくても会社がやらないといけない義務はごまんとある訳でして、だったらわざわざ会社の義務を書かなくてもよいかなと思うのです(もちろん、労働者の権利にかかわるような会社の義務は、あえて書くこともあります)。

ということで、私はどちらかというと石嵜派ですが、依頼があればモデル就業規則形式に合わせて書くこともしています。その辺は柔軟に対応しています。