守秘義務と社会保険労務士

社会保険労務士には守秘義務があります。社会保険労務士法第21条に定めがあります。

開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない。開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員でなくなつた後においても、また同様とする。

社会保険労務士法第21条 秘密を守る義務

これには罰則があり、違反した場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することになっています(同法第32条の2)。100万円という罰金も高いですが、懲役刑も想定されているので、かなり重い罰則と言えます。

毎朝聞いているX(旧Twitter)の社労士向けラジオでこんな話題がありました。

“顧問先で問題を起こした社員が退職したあと、また自分(社会保険労務士)の別の顧問先に面接し採用されることになった。顧問先には前社で問題のある社員だったことを言うべきか否か?”

これに対する私の答えは「No」です。

社会保険労務士に課せられた守秘義務は重いので、たとえ前社で問題のある社員だったことが分かっていても、それは前社の秘密に相当します。それを他社に漏らすことは社労士の守秘義務違反となります。

一方、善管義務という民法の規定(民法644条)があります。委任契約の範囲内で、善良な管理者として注意義務を負うというものです。善良な管理者であれば、問題のあった社員の入社について、ひとこと顧問先に忠告すべきではないか?という意見ももちろんあると思います。

これと社労士法の守秘義務(第21条)とのせめぎあいはどちらが優勢なのか、私は客観的な答えを持たないのですが、主観的には社労士法第21条に軍配を上げてしまいます。つまり、守秘義務を優先し、新しい会社には前社での問題についてはリークしません。

それでは新しい会社が損をするではないかと思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください、その入社する社員は確かに前社では問題行動があったかもしれませんが、反省しているかもしれません。新しい会社で心機一転、一生懸命に働こうとしているのかもしれません。その結果、新しい会社(顧問先)では活躍し、会社に利益をもたらすかもしれません。

それを社労士がさまたげてよいのか?・・・などとも私は考えます。

という訳で、私は守秘義務を優先することが多いです。

今回なぜこんな記事を書いたかというと、今アルバイト先でもかなりの守秘義務が課せられているため、なかなかブログの記事にすることができないからです。

記事にしたい情報はたくさんあるのですが・・・書けません。ある程度フェイクを入れて書けばよいのでしょうが、ファクトチェックもおろそかにできないので、ジレンマです。