1週間の始まりはいつも日曜日でしょうか? – 月曜日起算のすすめ

変形労働時間制について説明しようとしたときに、いつも説明する側(私)が困惑するのが、カレンダーの始まりを何曜日にするか?という問題です。

昔作った変形労働時間制の小テストのカレンダー。日曜日が起算日の月が近くの月に見つからず、勉強会の翌月のカレンダーを採用しました。→結果、とても説明が大変になりましたorz

1週間の始まりは日曜日?

お客さん(聴衆)に合わせて変えればよいのですが、たとえば日曜日を起算日としているお客さんだったら説明の図も日曜日が最初に来るように作ればよいし、毎週水曜日が法定休日で、水曜日を起算日としているようなお客さんだったら、説明の図も水曜日が最初に来るように作ればよい訳です。そこまで気を遣わなくても、お客さんが複数いて、どういったカレンダーをお使いか分からなければ、問答無用で日曜日を起算日にしてしまえば説明が大変楽になります。

なぜ楽かというと、日本で流通しているカレンダーのほとんどが日曜日始まりですから、直感的に分かりやすいからです。あらためて資料を作らなくても、その辺の壁にかかっているカレンダーを使って説明するなんてこともできてしまうからです。

勉強会で使うカレンダーなんて、分かりやすければよいのだから、あまり複雑にせず、単純に日曜日スタートで作ればよいと今は思っています。そうは言っても、実際の運用(企業で使うカレンダー)では、週の始まりはどうしたらよいのでしょう?毎週日曜日起算でよいのでしょうか?

法的には週の始まりは定義されておらず、事業場における就業規則その他において定めてくださいということになっています。就業規則において別段の定めがない場合、日曜日から土曜日までの暦週を1週間というと解釈されます(昭和63.1.1 基発第1号・婦発第1号)。

行政が作る資料は日曜日起算が多い

行政が作る資料も、圧倒的に日曜日起算が多いです。厚生労働省が出している変形労働時間制の資料も、東京労働局が作成した変形労働時間制の資料も、中身は微妙に違いますが、いずれも日曜日起算です。

厚生労働省”1か月単位の変形労働時間制”リーフレットより。日曜日起算になっています。
東京労働局”「1箇月単位の変形労働時間制」導入の手引き”より。これも日曜日起算になっています。

ところが、月曜日を起算日としている資料も過去にはありました。

平成9年3月10日全訂新版3刷印刷発行「労働基準法 上」労働省労働基準局編著376ページ。月曜日起算になっています。

この月曜日を起算日とするカレンダーは、昭和63年に1か月単位が変形労働時間制に導入されたときから歴代のコンメンタールに脈々と受け継がれてきたものでして、個人的にはこの方が分かりやすかったなと思います。

ところが労働省労働基準局さんは、平成12年のコンメンタールの改訂のときに、カレンダーを日曜日起算に変えてしまいました。

平成12年3月1日改訂新版印刷発行「労働基準法 上」労働省労働基準局編著379ページ。日曜日起算に変わりました。なんで!?

これにより、情報量がグッと少なくなってしまったナーと感じています。

前の方がよかったなーと。

どういうことかというと、週の起算日は自由に決めてよいものだという情報と、1か月の起算日も自由に決めてよいものだという情報が、図からは読み取りにくくなってしまったなと感じるのです。

まあ、本文を読めば分かるのですが、図しか見ない人にはピンとこない情報になりました。

月曜日起算をすすめる理由

私は個人的には法定休日が日曜日である企業さんには、週の起算日を月曜日とすることをおすすめしています。

なぜかというと、法定休日がまだ終わっていない方が運用が楽だからです。

月曜日から水曜日まで働いた時点で、「あ!このままだと来週月曜日の納期がやばい!どうすっぺ?(群馬弁)」ということがあります。

月曜日が起算日の週のイメージ。

そんなときに、残された日数で人の手配や労働時間の延長を検討します。

最悪、法定休日である日曜日にも工場を開いて稼働することも検討するでしょう。

そんなときに、月曜日起算であればまだ法定休日は到来していませんので、柔軟なやりくりができるのです。「君、金曜日休んで、代わりに日曜日出てもらってもよいかな?でないと納期が間に合わないんだわ」ということが、同一週内で可能となるのです。

金曜日と日曜日を交換した結果、1週間の労働時間を40時間に抑えることができる。

これが日曜日起算ですと、すでに法定休日が終わった後なので、どうしても休日の振り替えが週をまたぐことになります。同一週内で完結できません。

日曜日起算だと、振り替えることができる選択肢はもう土曜日しか残っていないのです。あるいは、翌集の日曜日に振り替えるしかないのですが、翌週の日曜日はこの週とは別の週なので、別の週の法定労働時間が40時間を超えることになってしまうのです。

週をまたぐとどんな嫌なことが起きるかというと、ある週では法定労働時間内におさまっても、別の週の法定労働時間がオーバしてしまうということです。つまり、時間外労働が増えますので人件費が増えます。

1か月変形の場合の月の起算日と週の起算日について補足

1か月変形を採用している場合に問題となるのが、1か月単位の1か月の起算日と、週の起算日とが一致しない点です。

これは一致させる必要は全然ないのですが、よく分からないまま変形制度を採用している方がいるので念のため補足しておきます。

1か月単位の変形労働時間制を就業規則に定めるときに、絶対的に記載しておかないといけないのが変形期間の1か月はいつから始まるかということです。これを変形期間の起算日といいます。

変形労働時間制というのは労働者に負担が大きい制度です。あいまいにしておくとよくない!ということで、はっきり変形期間(月)の起算日を明記しておく必要があります。

給与の締め日とリンクさせるのがおすすめです。まあ、たいていの企業でそうしているとは思いますが(例:20日締の企業でしたら、1か月変形の起算日を21日とする)。

週の起算日というのは、法定労働時間が週40時間1日8時間(労働基準法32条)という決まりでして、この週というのはどの週なのか?という観点で見るときに使います。

これを就業規則に記載しておけばよいのですが、たいていの企業さんは記載していません(モデル就業規則に書いていないからでしょうか?)。書いていないと、日曜日起算となります(昭和63.1.1 基発第1号・婦発第1号)。

もし週の起算日を就業規則に記載するのであれば、コンメンタールでは2通りのやり方を紹介しています。一つは暦週でみる方法です。つまり日曜日から土曜日までです。もう一つが変形期間の起算日の曜日を週の起算日に一致させる方法です。これは計算が楽になるのですが、直感的にはピンとこないやり方になるかもしれません。

どちらでもよいですし、もう一つ私が提案するように法定休日の翌日を起算日とする方法でもよいでしょう。平成9年までのコンメンタールでは月曜日起算のカレンダーで説明していましたし、別に月曜日起算でもよいのです。

暦週以外のやり方を採用する場合は、必ず就業規則に記載してください。でないと法的効果は得られません。

手に負えないときは専門家に聞くこと

以上の話が分からないときは、社会保険労務士などの専門家に聞くのが一番ですが、無料ということはありません(最初の相談だけ無料という士業も多いですが)ので、私がおすすめしているのは、労働基準監督署(労基署)に聞くことです。お役所に聞くのはタダですから(税金を払っているので、厳密な意味での無料ではないですが)。

労基署に聞いたら藪蛇になるんじゃないかという心配は無用です。労基署は意外と優しいんです。どうしても心配でしたら、会社の電話は使わず、私用の携帯電話からかければよいでしょうし、お名前も個人の名前は名乗っても、会社名までは名乗らなければよいです。労基署はしつこく会社名まで聞くことは(あまり)ありません。

ただ、管轄の事業所かどうかは念を押されます。縄張り意識というより、管轄している地域の業務だけでも手一杯なのでしょうね。それなのに、管轄外の事業所の相談を受けても、責任も取れなければ対応もできないから、だと推測しています(管轄地域外の事業所について答えるのは法的根拠がないという理由もあるでしょう)。

労基署に聞くときは、より具体的に聞くようにしてください。抽象的な質問ですと、彼らも答えにくいです。給料計算したらいくらになったけど、従業員からそれは違うんじゃないかといわれました。計算は合っていると思うんですけど、従業員が言うには労働時間の判定方法が違うって言うんです。1か月変形を採用しているんですけど、何か違うんでしょうか・・・?というように。

私の経験では、どの労基署でも親切に答えてもらえました。すぐに答えが出ない場合は、一旦電話を切って、調べてから折り返しで電話をもらったこともあります。