長時間労働に対する監督結果

長時間労働が疑われる事業場に対する令和3年度の監督指導結果が公表されました。

長時間労働が疑われる事業場に対する令和3年度の監督指導結果を公表します – 令和4年7月29日労働基準局 監督課 過重労働特別対策室

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27109.html

毎年公表

この監督は、長時間労働により広告代理店の若い社員が自殺したことが問題となった後から、重点的に行われるようになった監督です。

また毎年11月は「過重労働解消キャンペーン」月間に指定されており、重点的に監督しています。

その都度、監督指導結果が報道発表されています。

私が調べた限りでは下記のとおりです(日付は報道発表のあった日付けです)。

令和4年7月30日 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27109.html
令和3年8月20日 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20409.html
令和2年9月8日 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13350.html
令和1年9月24日 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06801.html
平成30年8月7日 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00800.html
平成29年1月17日 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000148739.html
平成28年4月1日 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000115620.html
平成28年2月23日 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000113029.html
平成27年1月27日 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072217.html

長時間労働監督指導の報道発表資料から主な数値をまとめたもの(野口作成)

違法な時間外労働を確認した割合が減少傾向

これを見ると、違法な時間外労働を確認した割合が減少傾向にあることが分かります。

違法な労働時間を確認した事業場の割合

2019年(令和元年)に大きな法改正があり、労働時間の規制が強化されました。その影響によるものが大きいとは思いますが、政府のやっているこのキャンペーンによる成果もあると思います。

しかし、そういった大きな法改正があっても、政府がこれだけ真剣に過重労働を解消しようと努力していても、それでもまだ1か月100時間を超える時間外労働が確認された事業所が2,643か所もあることに驚きと、残念な気持ちを持ちます。

過重労働による健康障害防止措置が未実施の割合が水平維持

一方、過重労働による健康障害防止措置が未実施の事業場の占める割合が18.8%と、直近3年間では最も少ないながら、グラフで見るとほぼ水平方向に維持されています。

過重労働による健康障害防止措置とは

過重労働による健康障害防止措置というのは、36協定の特別条項を届け出るときに今は必ず記載しないといけない健康及び福祉を確保するための措置のことです。

時間外労働の上限規制わかりやすい解説
36協定特別条項の健康及び福祉を確保する措置の欄

この36協定届に記載した健康福祉確保措置については、条件に合致した場合必ず実施しないといけません。

労基署で届出を受理してもらいたいから、空欄だとダメだからという消極的な理由で記載するのではなく、実際に労働者が長時間労働時によって健康を害しないように、会社として何ができるかを考え、確実に実行できるものを選ぶ必要があります。

事業所の約2割がこの「措置」でつまづく

これまでの統計資料から分かるのは、約2割の事業場でこの「措置」がうまく実施できていない実態です。違法な時間外労働は最も多い年(平成27年)の73.9%から34.3%へと、大幅に減りましたが、「措置」が実施できていない割合は令和の法改正後増え、現在18.8%です。

新しい労働時間規制が始まったのが2019年(令和元年)度で、まず大企業から始まり、続いて翌2020年(令和2年)度から中小企業に対しても規制が広がりました。

この健康及び福祉を確保する措置の取り締まりも、令和元年度以降強化されたと考えられます。平成の時代は10%だった数字が、令和元年度にいきなり19.5%に急増していることからも分かります。

企業の中には、まだこの「措置」をどのように実施していくのがよいか、模索しているところがあるのではないかと思います。

自社にあったやり方を実施してもらえればよいと思うのですが、この辺のことを書くと長くなるので、続きは明日書きます。