健康福祉確保措置をどうしたらよいか【36協定特別条項】
- [記事公開]2022.08.01
- 労務相談
前回、厚生労働省の発表した統計資料から、事業所の中には健康及び福祉を確保するための措置がうまく実施できていないところもあるという実態が読み取れることをお話しました。
https://kn-sharoushi.com/20220731supervision_results_4_longworking/
今回は、この「措置」をどのように実施したらよいか、私の考えをお話します。
自社にあったやり方を
健康及び福祉を確保する措置については、自社にあったやり方を実施してもらえばよいと思うのですが、くれぐれも背伸びした措置を書いて、いざそのときなったら実行できないなんてことがないようにしてください(例えば、部署が1か所しかない工場で配置転換を選ぶとか。相談窓口を用意せずにこころとからだの相談窓口を選ぶとか)。
自社にあったやり方が分からないのかもしれません。そいういうときは、ぜひ専門家である社労士に頼ってもらいたいと思います。
インターネットを検索したら、こんなサイトを見つけました。
「措置」について具体的かつ個別に丁寧に説明してあります。私が言うことは何もない!と思いました(笑)。ぜひ参考にしてください。
それでも私が何かアドバイスできるとしたら、限度時間を超えた人に対する健康診断は実施が難しいということです。なぜなら、限度時間を超えた人に健康診断に行ってもらう時間的余裕はないからです。
ある長時間労働者は、月100時間を超える時間外労働を毎月やってらっしゃるほど忙しく、その多忙な時間にさらに追い打ちをかけるように会社に”健康診断に行け”と言われたそうです。しかし、「全く行く時間がない・・・;;」と嘆いていました。結局昼間健康診断に行き、その後会社に戻って、昼間できなかった仕事をその日深夜までやったそうです(何のための健康診断か)。
おすすめは⑩その他
おすすめは、⑩その他です。「⑩その他」として、「職場における労働時間対策会議の実施」と書くのです。
私の知っている会社の役員さんはたいてい毎月(毎週、毎日)会議をしています。会議が好きだなー!と感心するくらい頻繁に実施しています。
その会議の議題に「長時間労働対策会議」を入れます。日付と時刻、出席者を議事録に残し、誰がどれだけ長時間労働だったかを確認し、どうしたら彼らの長時間労働を減らせるか話し合います。・・・これって、多分すでに多くの企業で普段からやっていることだと思います、ただ議事録に残していないだけで。
議事録を残す手間だけ増えますが、費用はかかりません。
また、役員が労働者の長時間労働を把握できますので、大変有効です。どの社員が最も長時間労働となっているか、社長が把握できていないなんておかしいですよね?
社長が問題を認識すれば、いろいろな対策を打つことができます。仕事の量が多いのなら、受注量を減らすとか、受注を断るとか、別の部署に回すとか、外注に頼るとか。人の手が足りていないなら人を新たに雇うとか、別の部署から人手を回すとか、最新の機器を導入して生産性を上げるとか。一部門の一労働者だけでは解決できない問題でも、社長や役員が把握することで一気に解決へ進むことは多いです。労働者に忙しい時間をさらに忙しくさせて無理やり健康診断に行かせるより、よほど問題解決すると思いませんか?
この方法は2019年の大改正の直前に行われた、地元の社労士会の研修で教わりました。
実際の現場では
その後、2019年の大改正後、いくつかの企業の36協定を拝見し、どのように運用しているか興味深く観察しましたが、やはり⑩その他(対策会議)としている企業は少なく、安易に健康診断とか医師面談としている企業が多かったです。では実際に医師面談、健康診断を実施しているかというと・・・・まず長時間労働を把握すること自体ができていない企業が多く、残念ながら医師面談、健康診断を実施するところまでに至っている企業は少なかったです。
長時間労働を把握するためには、日々の集計が欠かせません。しかし、それをタイムリーに実施できる企業は少ないようです。小さい企業であれば社長が一人で全部やっていることもありますから、手が回らないのです。
長時間労働の実態があっても、経営者が把握していなければ「措置」の指示も出せません。経営者自身が月300時間近い長時間労働(労働者じゃないので長時間経営?)をしている場合もありすから!
勤務間インターバルとしている企業もいくつかありましたが、私が確認した限りでは、いざそのときに実施していませんでした(前日深夜労働となった労働者が、翌朝定時に出社していました)。これではだめです。
この「措置」は、必ず実行してください。実行できないなら書かないでください。それか、実行できないならそもそも時間外労働をさせないでください。
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