休憩時間とは

休憩時間とは、使用者の指揮命令下から解放された時間であり、労働者が自由に使うことができる時間である必要があります。

ベンチに座って休憩(RandomPicturesから)

休憩時間とは

労働基準法第34条に次のように定められています。

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

労働基準法第34条1項

深夜1時から朝9時までの勤務の場合、8時間の拘束時間のうち実労働時間は6時間を超えますので、45分の休憩時間を与えないといけません。
休憩時間で注意したいのは、次の条文です。

使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

労働基準法第34条3項

この「自由に」の意味ですが、使用者の指揮命令から完全に解放されたという意味です。

お昼休みに電話が鳴ったら出ないといけない場合、指揮命令下にあると見なされます。これでは休憩時間となりませんので、よくあるのが電話当番です。電話当番の人が一人残って休憩時間をずらすというやり方です。

ビルの夜間業務で深夜仮眠をとっていたとしても、警報や電話があればただちに対処する必要があることから、指揮命令下から解放されていないと見なされ、労働時間と認定された裁判例があります。

たとえタバコを吸っていても、来客があったらすぐに対応しないといけないような場合には、指揮命令下にあると見なされるおそれがあります。

コンビニの夜間勤務の場合

例えば、コンビニの夜間勤務者の場合。

深夜1時から朝9時までの勤務。休憩時間は45分の約束で契約しましたが、夜間は人が集まらず、どうしてもワンオペになります。

「客がいないときに小刻みに休憩をとってね、トータルで45分になるように」という店長の指示で、深夜3時過ぎ、客が途絶えたので制服を脱いで、外の喫煙所でちょっと一服をしようとしました。タバコに火をつけたとたん、車が停車、来店するお客様あり。泣く泣くつけたばかりのタバコの火を消し、制服を着て店内に戻りました。

こういう場合の煙草を吸っていた時間(実際には吸っていない)は、休憩時間でしょうか?

もちろん、運よく誰も来ず、タバコを1本全部吸い終わることができるときもあります。

しかし、いずれも来客があったら即対応しないといけないという事情があり、実際来客時には即対応している事実もありますので、使用者の指揮命令下にあると見なされる可能性が強いです。

休憩時間ではなく労働時間であることの証明は容易

コンビニではレジ操作をするときに客層ボタンを押して、客の性別とだいたいの年齢の統計をとっています。毎日毎時間記録されており、それを見れば深夜でも来客がゼロの時間帯がないことが分かります。つまり、深夜45分まとめて休憩をとることは不可能だということを証明することができます。

また、監視カメラが何か所も設置されています。直近1カ月程度しか記録が残っていない店舗が多いようですが、だいたいの雰囲気をつかむことが可能です。

タバコを吸うとき以外はバックヤードで制服を着たまま、椅子に座って監視カメラを見ながら、いつ客が来るかびくびくしながら休んでいる従業員の姿を確認することができるのではないでしょうか?

来客があると困るから、おちおちトイレにも行けず、外出もできず、制服を脱いでも又すぐ着る羽目になるから脱ぐこともせず、ただ椅子に座って休んでいる姿。・・・これでも休憩時間をとらせたと使用者が主張することはできるのでしょうか?

小刻みにとるから、トータルでは45分どころか2時間も休んでいる日だってある!と主張するかもしれません。しかし、そのトータル2時間休んだ日も、その2時間はすべて指揮命令下にあったと言えます。来客が来たら即対応していましたよね?でなければ、客層ボタンが押される訳がありませんから!

トータルで休んだ時間が2時間であろうと、それは休憩時間ではありません。指揮命令下にある時間です。労働はしていなかったかもしれませんが、自由な時間ではありませんでした。

未払い賃金が発生している

毎日勤務時間登録の際、休憩時間の欄に「45分」と記録しており、賃金は45分控除した状態の時間で計算されてしまっていた場合、実態として休憩時間はとれていませんので、未払い賃金が発生している可能性が強いです。

勤務時間中なのにタバコを吸っている時間も給料を払うのか?というご不満はごもっともです。

勤務時間中は職務専念義務を(就業規則等で)労働者に課している企業の場合、タバコを吸っていたら職務に専念していないということになります。その場合は、いきなり賃金控除するのではなく、人事評価や契約更改の評価などに反映させてください。賃金には全額払いの原則があります。まずはちゃんと全額支払ってください。職務専念義務違反については賃金とは分けて考えてください。

そもそも、使用者の指揮命令下から完全に解放された休憩時間を確保できない時点で、使用者側に非があります。労働者は労働基準法で最低限と定められたはずの休憩時間をとることができず、自衛的に休憩をとっているにすぎません。

2020年から賃金債権の時効が2年から3年に延びました。今日は2022年8月です。以前の法律でしたら、2020年4月、5月、6月、7月の賃金債権は消滅していました。ところが法改正により、今日現在、これらの期間の債権はまだ消滅していません。このまま放置すると、MAX3年分の賃金未払いが請求されるかもしれませんよ?

労働基準法は強行法規

「労働者の中には納得ずくの者もいる、本人と会社両方が納得してやっているのだから、別に良いのではないか?大きなお世話だ!」と思われる使用者もいるかもしれません。

しかし、労働基準法第13条によって、そのような取り決めは無効です。

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

労働基準法第13条

ですから、どんなに労働者が「別に細切れ休憩でもいいっすよ♪」と言っても、ダメです。

そして、労働基準法の怖ろしいところは、さらに罰則もあることです。

労働基準法第34条に違反して休憩を与えなかった場合、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法第119条1号)。

「でも何年もこのやり方でやってきたのに、特に労働基準監督署からは何も言われていないし、労働者からも特に何も言われていないけど?」とおっしゃるそこのあなた、運がよかったですね。将来もそうだとよいですね。しかし、今はネットに情報が氾濫しています。果たしてこの後も無事でいられるでしょうか。

労働基準法は強行法規といって、強制的に適用になります。しかるべき機関が事実を把握したら、あるいは労働者が通報したら・・・・どうなるでしょうか?使用者にとって大変不利な状況になると思います。

悪いことは言いません。早急に改善してください。改善方法に迷うのであれば、信頼できる社会保険労務士を頼ってください。