締日をまたぐ週の法定時間外労働の計算【一年変形の場合】

以前書いた記事の続きです。締日をまたぐ週の法定労働時間を超えたかどうか判定する方法について、一年単位の変形労働時間制の場合の私の考えを紹介します。

前提

2022年9月執筆時点での法律、行政解釈にもとづく、私個人の考えであり、法的効果を保障するものではないことについてご了承ください。

場合分け

1年単位の変形労働時間制の対象期間は、1か月を超え1年以内の期間に限るものとされており、1か月を超え1年以内であれば、9か月、10か月でも構いません(労働法コンメンタール、令和3年版労働法上456p)。

また、対象期間が3か月以内の場合と、対象期間が3か月を超える場合とで労働日数の上限などの制約の有無が異なります。

さらに、対象期間が長期にわたるので、1か月以上の複数の期間に区分し、最初の期間における労働日及び労働日ごとの労働時間等は協定当初に詳しく定めるものの、その他の期間については各期間の労働日数及び総労働時間を規定するだけで足りるというやり方も認められています(労働基準法32条の4第1項4号カッコ内)。

そこで、話をなるべく簡単にするため、次の3つに場合分けして説明します。

  1. 対象期間が1年の場合で、対象期間を分けない場合
  2. 対象期間が1年の場合で、対象期間を分ける場合
  3. 対象期間が3か月未満の場合

このうち、1.対象期間が1年の場合で、対象期間を分けない場合が最も説明がしやすいので最初に説明します。次に3.対象期間が3か月未満の場合について説明します。最後に最も複雑となる2.対象期間が1年の場合で、対象期間を分ける場合について説明します。

本日は、1.対象期間が1年の場合で、対象期間を分けない場合について説明します。

なお、それぞれの細かい協定内容や制度の概要は説明しません。1年単位の変形労働時間制がどういうものかある程度理解しているものとして話を進めますので、1年単位の変形労働時間制とはなんぞや?という方は、ブラウザのバックボタンで戻ってください。

対象期間が1年の場合で、対象期間を分けない場合

対象期間が1年の場合で、対象期間を分けない場合というのは、1年単位の変形労働時間制の協定を締結する段階で年間カレンダーを作ってしまう場合のことです。

次のカレンダーで給与締め日が月末で、支払日が翌月10日のケース。

対象期間が1年間のカレンダーの事例

締め日をまたぐ週については、通常の労働時間制の場合と同様、その週が完結するまでは週の法定労働時間超の判定はしなくても大丈夫です。

例えば5月31日締では6月1日~3日の稼働がどうなるか分かりません。

よって、6月10日の支払の給与では、5月30日と5月31日の週の法定超についてはいったん保留で支払います。

6月30日締の給与計算では6月1日~3日の稼働が確定しているはずですから、この段階で週の法定労働時間超があれば計算して7月8日支払(7月10日が日曜日なので前倒し)の給与で支払います。

最終週(4月の第6週)だけが半端なので取り扱いに注意が必要です。幸い日曜日なので休日出勤がなければ特に計算に困ることもないでしょう。

対象期間が3か月未満の場合

次のようなカレンダーの3か月単位の変形労働時間制で、給与締め日が末日、翌月10日払いのケースで説明します。

3か月単位の変形労働時間制のカレンダーの事例

1月31日締と3月28日締の給与計算においては、週の法定超えは判断できませんので保留です。

翌月末の給与計算のときに決着をつけることになります。

問題は3月末です。

この週はまだ1週間の最後の日(4月1日)が完了していませんが、変形期間が終了しますので、この週はどうしてもこの段階(3月31日)で週法定超えを判断し、計算します。

前の2か月が翌月に持ち越すことができたのは、変形期間の途中だったからです。

3月31日の次の日はもう別の変形期間になりますので、持ち越しはできません。

ちゃんとここで決着をつけて計算します。

なお、変形期間の総枠超えの計算も必要となります。

対象期間が1年の場合で、対象期間を分ける場合

次のような、区分期間を4か月とする1年単位の変形労働時間制のカレンダーで、給与締日が末日、翌月10日払いのケースで説明します。

4月末、5月末における給与締め日において、それぞれ最終週の法定超は、翌月にならないと確定しませんので、次月の給与計算に持ち越します(6月はたまたま切りよく1週間が終わっているので問題にはならないと思います)。

問題は、7月末です。これは、1年単位の変形労働時間制の変形期間の途中ではありますが、区分期間の終わりでもありますので、この7月の最終週は、いったんここで締めて週の法定超労働時間を計算します。

次の区分期間が始まったら(8月~11月)、最初の週(8月1日の週)と最後の週(11月30日の週)は半端な週になりますので、半端な日数で週の法定超えがないか判定します。

まとめ

以上、1年単位の変形労働時間制の週をまたぐ計算をどうするか、私の考えを説明しました。

繰り返しになりますが、あくまで私の考えです。

何かのお役に立てば幸いです。

ここまでお読みくださりありがとうございました。