第6次農業さんにおすすめの労働時間制

変形労働時間制ではないのですが、第6次産業の農家さんにおすすめの手法の労働時間制を、どこかに発表することもないのでここに投下しておきます。

農業の場合、法32条の規制は適用除外となっていますが、私の話の大前提には外国人技能実習生がいます。彼らは技能実習法で守られており、農業であっても法32条の規制に準じた取扱いをすることとなっておりますので、その前提でお読みください。参考に、農林水産省の該当部分をリンクしておきます。

〇 技能実習生を受け入れる際の労働基準法に関して

https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/

農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について(平成12年3月農林水産省構造改善局地域振興課通知)(PDF : 208KB)

1週間を7日でなく6日にする

1週間は暦日では7日ですが、別にそれに拘泥する必要もないので、6日にしてしまいます。

労働者には5日働いてもらい、1日休んでもらいます。これを繰り返します。これにより法定休日1日の問題はクリアするはずです。

1日に働く労働時間は6時間40分くらいが限度です。これを超えたら1.25割増で支払うことにします。法定を上回る割増を支払うことになりますが、未払いを発生させないことが目的なので、上回る分にはOKです。

農家さんだと早朝に働いてもらい、日中の暑いときは避けた方がよいので、早朝3時間半、夕方3時間10分に設定するのがよいと思います。この辺は、事業場によっていろいろアレンジできると思います。

なお、1日に働く時間を6時間40分を超える時間に設定すると、週法定労働時間の40時間を超えてしまった部分を計算するのが面倒になるのでやめておいた方がよいです。どうしても週法定労働時間40時間を超えて労働させたいのであれば、1か月単位の変形労働時間制を検討します(後述)。ここで紹介するのは、変形労働時間制をとらないで働いてもらう方法です。

労働時間の集計

労働時間については、月単位で計算します。

総枠は大の月は177時間とします。小の月は171時間。29日の月は165時間、28日の月は160時間とします。くれぐれも177.1とか、171.7とか、端数を入れないでください。これは細かいことですが、未払いの発生を防ぐためです。また計算をより楽にするためでもあります。

1か月の労働時間をチェックし、休日とした日に働いているようならその日は除きます(割増率が異なるので)。それ以外をすべて加算し、総労働時間数を集計します。

給与の計算

総労働時間数から総枠を引いた値については1.25で計算します。

それ以外は1.00で計算します。すごく単純です。計算がとても楽です。

1.35で計算すべきものや、深夜割増があるとこう単純にはならないのですが、基本的には日単位、週単位での判定を省けるので楽です。

どうして日単位、週単位での判定を省けるかというと、所定を超えたらすべて1.25とする方針だからです。少し多めに払うことになってしまいますが、計算を楽にするという目的もあるので、そこは了承してもらうしかないです。ただ、労働時間の判定や、計算にかかる手間暇の経営者側の作業工数を考えると、断然こっちの方が費用対効果は高いと思います。

1か月単位の変形労働時間制との合わせ技

1日の所定労働時間が6時間40分でなく、7時間としたいときは、1か月単位の変形労働時間制を採用します。

採用するための細かい条件はここでは省略しますが、1週間は7日でなも6日でもなく、5日としてください。労働者には4日働いたら1日休んでもらいます。これを繰り返します。

1週間が5日なので法定休日の問題はクリアです。

暦日で7日ごとに区切った場合、週の法定労働時間を超える週が2回~3回発生しますが、変形労働時間制を採用していますので、均せばクリアするはずです。ただ、2月だけは均しても週40時間をちょっと超える場合がありますので、そこはなんらかの手を打つ必要があります。休みを1日増やすか、所定労働時間を1時間減らす日を設定するかします。

後の運用は前述と同じです。

このやり方の何がよいかというと、カレンダーを作らなくても、休みのタイミングさえ最初に教えてしまえば、それぞれが4日おきに休みますので管理が楽ということです。1か月変形のカレンダーを作成するのは、本当に経営者にとって負担が大きいと思います。それがなくなるのは大きなメリットです。それから、就業規則に文章化しやすい点もメリットです。1度文章化し、周知してしまえば、あとは契約書に就業規則の第○○条参照と書くだけなので、運用も楽です。

なぜ第6次産業の農家限定か

なぜ第6次産業の農家さん限定かというと、私がヒントを得たのが第6次産業の農家さんだったからです。

第6次産業とは、第1次産業(生産)+第2次産業(加工)+第3次産業(販売)のすべてを担っている場合を言います。私が見た農家さんがまさにそれでした。

自前で生産、加工し、販売先も自前の店でしたので、労働者の休みをどのように設計するかは経営者次第でした。そこで、休日設定を1週間7日とせず、1週間6日と考えることで、弾力的な労働時間を構築していました。3人の技能実習生が働いていましたので、一人ずつ休みの日をずらすことで、常に労働者を確保することができていました。

いったいどの社労士さんのアドバイスがあったのか存じませんが、初めて拝見したとき「すごいな!」と思いました。

ただこれは、第6次産業だからこそなせる技だと思いました。納品先のスーパーの休みが決まっていたり、市場の都合に振り回される農家さんだと使えないと思います。