憲法を読む
最近必要に迫られて憲法を読んでいるのですが、気が付いたことがいくつかありますのでつらつらと書いてみます。
裁判官
裁判所の判決文を読んでいて気が付くのは、裁判官の行政解釈に対する塩対応です。
労働時間の考え方について興味があり、関係のありそうな判決文をピックアップして読んでいるのですが、ことごとく行政解釈は引用されていません。
一応、参考にはしているのかな・・・?とは思うのですが、基本的に裁判所の判決文で引用されるのは法の条数であって、行政解釈は出てきません。例えば、労働時間の端数の処理なんて法律の条文にはなかなか出てきませんので、社労士業務では行政解釈が頼りになることが多いのですが・・・。
そうしたところ、この前憲法を読んでいて「これだ!」と思ったのが、これ↓です。
すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
憲法76条3項
そうか・・・・そりゃ、そうか。裁判官は憲法と法律にのみ拘束されているのですね。だから、行政の解釈なんて気にしていない訳だ・・・これを司法権の独立というそうです。なにか昔ならったような(学生時代の憲法講義)・・・すっかり忘れています。
会計検査院
私は個人的に会計検査院という組織に注目しています。つい最近もまた、おもしろい検査結果が上がってきましたね。フラット35に対する適正な融資後の状況把握等についてなんですが、ざっと読んだだけでも「ぶれないな、会計検査院」と思いました。
会計検査院は税金の無駄遣いを監査する役所と言われていますが、私は個人的には監査のプロ、徹底した検査をする組織と思っており、尊敬しています。私なんてぶれまくり、妥協しまくりの監査をしてきましたので(外国人技能実習生関連の監査)、一本筋の通った検査をする組織を見ると、背筋がピンッと伸びるような心地になるのです。
さてその会計検査院ですが、憲法を読んでいたらひょいっと出てきてびっくりしました。これ↓です。
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
憲法90条
② 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
そうか・・・・、会計検査院は憲法に定められた組織だったんですね。知りませんでした。
憲法で定められた組織というのは、あまり多くありません。国会や内閣等、有名なところは私でも知っていましたが、まさか会計検査院が憲法で定められた組織だったとは!
勤労の権利
なんとなく、労働は義務だと思っていましたが、労働は権利でもあると憲法に書いてありました。これ↓です。
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
憲法27条
② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
③ 児童は、これを酷使してはならない。
第2項が労働基準法をはじめ、労働法の立法根拠となっていることはさすがに私でも知っていましたが、第1項がハローワークなどの根拠となっていることは知りませんでした。
ポリテクセンターもこの27条が根拠となっているようです(菅野和夫先生の労働法第12版29p)。
まとめ
社会保険労務士試験の科目には憲法は含まれていません。遠く高校生のときの政経公民の授業、大学生の一般教育課程の憲法講義でしか憲法を学んだことしかない私には、なかなか読んで理解するのに四苦八苦しています。
しかし、新たな発見があるたびおもしろいなと感じます。気の付いたことがあれば、またレポートしようと思います。
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