士業の顧問料は高いか安いか

社会保険労務士に限らず、「士業の先生の顧問料が高い!」という苦言をいただくことがあります。士業の顧問料を高いと考えるか適正と考えるかは、各個人の自由です。一士業のはしくれとして、私の考えを書きます。

群馬県安中市から見える浅間山

相談がない月にも報酬が必要な訳

顧問料について、「相談がない月にも報酬が発生する」という不満はよく聞きます。

しかし、相談がないからといって、士業の先生が何もしていない訳ではないです。

私の場合、毎日各官公庁の新着チェック、同業者や他士業のWebチェックをしています。気になる審議会、委員会は随時、議事録・資料をチェックしますし、TwitterなどのSNSから発信される情報にも目を光らせていたりと、情報収集にはかなり時間をかけています。

専門書の購入にはかなり費用がかかります。1冊6,000円くらいの分厚い本が、多い先生では法改正に合わせて毎年改版されるので、書籍代はけっこうな出費です。厚生労働省が出している行政解釈の本も、定期的に改版されるので、新しいものが出たら目を通す必要があります。今はもう絶版になった本だと中古本で探すのですが、3万円くらいします。

判例検索も図書館の無料サービスを利用して経費削減していますが、プリント代は実費です。最高裁の判決が出たときなどは、1審→高裁→最高裁→差戻高裁→差戻最高裁などと複数の裁判所での判決文をすべて印刷して読まないと意味が通らないので、結構な印刷代となります。ちなみに、判例検索を自前で業者と契約しようとすると、年間30万円程度かかるそうで、私はさすがに契約していません。

士業向けに開催されるセミナーにも参加しています。無料のセミナーもない訳ではないですが、基本的に士業向けセミナーは料金が高いです。1回の参加料が10万円なんてものもあります。私は参加しませんでしたが、Twitterで拝見した社労士さんは、参加料50万円のセミナーに参加していました。

相談がない月にも報酬が発生することに不満を持たれないために、定期的に企業向マガジンを発行している士業の先生もいます。このマガジンも、業者が作ったものを流用している場合、費用がかかります。もちろん、ご自身で発行している先生もいます。この場合は、その先生の工数がかかっている訳です。

企業にタイムリーに情報提供し、法改正に後れをとらないようにするためには、どうしても日々の研鑽が必要です。士業というのは常に勉強すること、情報を収集することが宿命づけられている業種です。

それにはお金がかかるのです。

安ければよいのか

1月5,000円という破格な顧問契約をしている先生を見たことがあります。

しかし、1月5,000円では、その先生が生活していくためには最低でも30社と契約(15万円)しなければなりません(単純計算で)。

30社というと、1か月毎日1社ずつ対応してようやく全部の企業に対応しきれる量です。30社から毎日電話をもらっても、一人で対応しきれるかどうか?・・・・現実的ではないです。

一方、1月3万円という顧問料であれば、5社と契約すれば1か月15万円の報酬となりますので、1社あたりかなりゆとりのある相談業務ができることになります。

サービスの質を維持するのに必要な報酬という観点で見ると、あまりにも安い士業の顧問料は、私は懐疑的です。本当にそれで質を維持できるのか、と思います。たとえば、ただ電話で話を聞くだけでなく、書類をもらって細かくチェックしたり、過去の判例を調べたり、行政当局に疑義を問い合わせたりする時間も必要です。そういった時間を、月に30社の顧問を抱えていて、確保できるのでしょうか?

激安の料金設定はサービスの質を落とすのはもちろん、処理しきれない量の仕事を抱えることになります。その結果、社労士が体を壊しては、医者の不養生、紺屋の白袴、髪結いの乱れ髪です。

もちろん、「私は」という前提です。激安の料金設定でも、質を落とさず上手に仕事量をコントロールできる先生もいると思います。

人を雇うともっとかかる

たとえば、自社内に人事労務を専門にする人間を雇うとなると、月に20万円以上かかります(群馬県の事務員の相場)。東京などの都会であればもっとかかるでしょう。経験者を雇うとなると、さらに金額を上げないと人材は集まらないかもしれませんし、未経験者を雇ったのであれば、教育して育てる手間暇が必要です。

しかし、外部委託すると、顧問料として月に数万円程度で済むわけです。

また、労働者としていったん雇うと、そう簡単には解雇できません。労働基準法や雇用契約法の規制を受けますので。

ところが顧問契約はそういった規制は受けませんから、いつでも解約できます(1年間程度の期間保障を設けている顧問契約もありますが)。

どちらがよいかは、企業の考え方だと思います。

スポット契約がメイン

ちなみに、わが事務所では顧問契約もやっていない訳ではないですが、スポット契約がメインです。

1か月のスポットでの顧問契約がメインです。

料金は3万3千円と、群馬県の相場では高い方だと思いますが、全国を対象にしているためこの料金設定となりました。

人を一人雇うよりは安いと思うのですが。

メール顧問サービス – 野口香社会保険労務士事務所

珍しく、宣伝めいたことを書きました。