24協定と技能実習生
24協定というのは賃金控除の協定のことです。
24協定とは
24協定は、労働組合がある企業さんですとチェックオフ協定などということもあります。労働基準法第24条にもとづく協定なので24協定などと呼ばれています。
給料は全額支払うのが原則です(労働基準法第24条)。
しかし、法令に定めがある場合は給料から天引きしてもよいことになっています。
法令に定めのないものを勝手に給料から天引きした場合には、24条違反となります。違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます(同法120条1号)。罪数は労働者各一人につき1罪とカウントします(最高裁第小法廷昭和33年(あ)1614号日本衡器工業事件昭和34年3月26日)。
会社によって、給料から天引きしないと都合が悪いことがあります。そんなときにこの24協定をかわします。
たとえば社会保険料は翌月の給料から天引きするのが原則ですが、当月の給料から当月分の社会保険料を天引きしたい場合があります。
そんなときにはこの24協定を交わします(もし交わさずに勝手に当月の給料から当月分の社会保険料を天引きしているのであれば、24条違反となる可能性があります)。
届出不要
24協定は労働基準監督署に届出はいりません。一度かわしたら、会社で保管しておけばOKです。
なお、36協定は労働基準監督署に届け出が必要です。
周知が必要
24協定は、従業員に周知する必要があります。
周知方法は就業規則や36協定といっしょです。労働者が知ろうと思えば知ることができる状態にしておけばよいです。
私は1部だけ印刷し、クリアファイルに入れて事業場のみんなが見ることができる場所につるしておくことをいつもおすすめしています。バージョン管理と原本管理が楽だからです。
外国人技能実習生と寮費
外国人技能実習生は基本的に外国から来ます。
もし会社に外国人技能実習生を受け入れるのであれば、住むところを用意してあげないといけません。
たいてい会社の近くのアパートを借りて、アパート代を給料から天引きすることになると思います。
この際、勝手に天引きしないでください。24協定を交わしてください。
これまで会社で24協定を交わしたことがあるのであれば、新たに「寮費」といった項目を追加しないといけないので、改めて労働者の過半数代表者と協定をしてください。
これまで一度も24協定を交わしたことがなければ、36協定を交わすときの要領で労働者の過半数代表者を労働者たちに決めてもらい、24協定を交わしてください。
監査と協定書
外国人技能実習生を受け入れると、基本的に監理団体が定期的に監査に訪れます(監理団体型の場合)。
その際この24協定もチェックされます。
毎回はチェックしませんが、1年4回ある監査のうちどれか1回は必ずチェックするように私はしていました。
有効期限
36協定の有効期限は最長でも1年と決まっています。
そのため毎年36協定を交わす必要があります。
ところが24協定には有効期限はありません。
わざわざ有効期限を設けて労使協定する必要もないと思いますので、最初に外国人技能実習生を受け入れる段階で24協定を交わしたら、その後その協定書は内容に変更がない限りずっと有効です。
例えば協定の当事者となる労働者が退職したとしても、項目に追加や削除、修正がないのであれば有効です。
よくもらった質問に、「1期生の外国人が3年経って帰国しました。新しい外国人が入国していますが、あらためて賃金控除の協定書を交わすべきですか?」というものがあります。
当事者が帰国して退職しただけなら不要ですが、内容を見直し少しでも追加削除修正があるのであれば、あらためて24協定を交わす必要があるでしょう。
私が見た中では賃金控除協定書の名目は「寮費」だけだったのに、実際の給料明細を確認したところ寮費だけでなくアパートの水道光熱費も天引きしているケースがありました。
この場合は水道光熱費も天引きすることを追加する必要があります。確かこのときはあらためて24協定をかわしてもらったと思います。
事業場単位
24協定は事業場単位で労使協定するのが原則です。
会社単位ではないです。
A県に本社がある会社のB県の工場で外国人技能実習生が働くケースで、B県の工場に監査に行ったところ「賃金控除の協定書は本社にあります」と工場長に言われたことがありますが、このケースでは工場単位(B県の工場)で労使協定が必要でしたので、新規に24協定を交わすようお願いしました。
といっても規模、組織形態によって本社でまとめて協定でよい場合もありますので、事例ごとに確認が必要です。
新聞社の特派員が一人だけの地方通信部において、独立性がないとされ本社でまとめて労使協定することを認める通達が出ています(昭和23年5月20日基発799号)が、生命保険会社の支部、営業所は原則として一事業とする通達も出ています(昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号)。
迷ったら、管轄の労働基準監督署にご相談になるか、社会保険労務士にご相談になるとよいと思います。
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