自主的サービス残業
長時間労働が問題となる昨今、一方で、自主的にサービス残業、サービス早出をする労働者がいます。
かつては、私もその一人でした、
若いとき、まだ社会保険労務士の知識がないころ、どこまで仕事ができるか試したく、日付をまたいで連続して仕事をしていたことがありました(もちろん後で大問題になった^^;)。
今考えると、なんて自己中心的だったのだろうと冷や汗がでます。
しかし、当時の自分に罪悪感はなかったです。とても無知でした。
自戒をこめて、自主的サービス残業の何が問題なのかをまとめてみました。
業務量を把握できない
自主的にサービス残業をしている労働者がいると、会社が正しい業務量を把握できません。
ソフトウェア開発の会社でパートをしていたときに拝見し、すごい!と感心したことがあります。その会社では工数管理がとても緻密でした。
仕事の難易度、難易度ごとにかかる時間数を、それぞれのプロジェクトごとに記録し(作業するSEとプログラマ全員が毎日記録する)、プロジェクトが完了する都度集計し分析し、次回のプロジェクトに活かすというPDCAサイクルが定着していました。
こういう会社でサービス残業をすると、この工数管理が正しくないものになってしまいます。
そこで、当たり前のことですが、残業時間についても緻密に管理されていました。
自主的にサービス残業をする人はよかれと思ってやっているのかもしれませんが、工数管理、業務量見積もりという観点で考えたときに、会社にとって迷惑です。
正しい業務量が分かれば適切な人員数も配置できるのに、サービス残業をしている人のせいで配置できなくなります。
法違反
労働安全衛生法上、会社には労働者の労働時間を適正に把握する義務があります。
サービス残業をされてしまうと、会社は正しい労働時間を管理しているつもりだったのに、していないことになってしまいます。
労働時間適正把握義務には罰則はありませんが、
- 36協定に定めた上限を超えた場合
- 賃金台帳に正しい労働時間を記入する義務違反
この2つには罰則があります。
未払賃金
自主的にサービス残業をしている人は「お金なんていらない。サービスで働いているんだからいいでしょ」と思っているのかもしれません(かつての自分がそうでした)。
ところが、労働者が働いた場合の賃金については労働基準法という強行法規に定めがあります。
たとえば本人が「いらない」と言っても、会社は賃金を支払う義務があります。
強行法規なので、本人や会社の意思は関係ないです。
法律の条文に該当したら、即適用されます。
したがって、自主的にサービス残業をしている人を会社が把握できてない場合、会社は知らず知らずのうちに未払賃金の負債を負っていることになります。
この負債は、現在では時効が3年になりました。
一人だけでも、3年間ずっと自主的なサービス残業を続けられたら、結構な金額になります。
人事評価
以前(昭和の時代)、たくさん残業している人は仕事熱心という価値観がありました。
ところが今は長時間労働に対する価値観はだいぶ変わりました。
こういう昭和的な人事評価は今は少ないですね。今はむしろ、労働生産性重視です。長時間働くより、所定労働時間内にてきぱき仕事を処理する方が評価は高くなります。
会社への忠誠心、仕事への熱心さは、労働時間の長さでは評価せず、別のところで評価すべきです。
自主的にサービス残業をしている人がいると、会社がこうした正しい人事評価ができなくなります。
周囲への影響
サービス残業やサービス早出は、やっている本人は気にしていないかもしれませんが、周囲の人に悪影響を与えます。
早出をしないといけないのかとか、先輩社員が残っているから帰れないとか、間違った認識を同僚に持たれてしまいます。
自主的にサービス残業をする人は、サービス残業をする悪い文化を作っているのです。
その結果、人がすぐに辞めていきます。人材が定着しません。
まとめ
書いていて、辛くなりました。なんせ、すべて以前の自分にあてはまるからです。
サービス残業を会社が強制するのは論外ですが、労働者の方から進んでやるのも間違いです。
会社としては、こういう自主的にサービス残業をしている人を見つけたら放置せず、注意指導するべきです。
適切な注意と指導を怠ると、黙認していたとされ、将来法廷闘争の場で未払賃金を請求されたときに不利になります。
労働者側も、自主的にサービス残業をするのではなく、まずは直属の上司に相談報告連絡し、指示をあおぐべきでしょう。
・・・・と言う私が一番できていませんでしたが(反省しています)。