【労働者向】「相談」と「申告」

労働基準法には「申告」の定めがあります。

申告

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

労働基準法第104条1項

働く会社で不正や違反があるときは、労働者は労働基準監督署に通報することができます。これを「申告」と言います。

労働者が労基署に申告したからといって、使用者はその労働者に対して不利な取扱いはできません(同法同条第2項)。これに違反した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(同法119条)。

気をつけないといけないのは、申告したからといって労働基準監督署が必ず会社を臨検するとは限らないし、申告した労働者と会社の間を仲介して問題を解決してくれるということもないし、労基署が進捗を申告した労働者に教えてくれることもないということです。

また、労働基準監督署が会社に対して出す是正指導や是正勧告は、単なる行政指導でして、法的な強制力がないことにも注意です。勇気を出して申告に行ったのに、徒労に終わる可能性もあるということです。

相談

「労基署に相談したけど何もしてくれなかった!」と言う労働者のお嘆きを聞くことがあります。申告の場合であっても強制力がないのですから、単なる相談ならなおさらだ・・・・などと私は思うのですが、多分言っている人は相談と申告の違いがよく分かっていないのだと思います。

相談の場合は、労働基準監督署は話を聞くだけなので何もしません。相談はのるだけです。話を聞いて終わりです(相談員によっては、相談から始まった話でも申告手続きに進める場合もあります。ケースバイケースです)。

なので、もし労働基準監督署に相談に行くなら、「申告に来ました」と言ってください。

生活保護の申請主義

このあたりのお役所の使い方は、生活保護でも似たようなところがあります。

昔私の親も(かなり昔です。私が4歳ごろ)幼い私を連れて市役所に生活保護の相談に行ったのですが、何も解決せず、ただ話を聞いてもらって帰ってきただけでした。あとで「お役所は何もしてくれない!」とうちの母は嘆いていましたが、今なら母にこう言えます、「お母さん、相談に行ったらだめだよ。申請に来ましたって言わなきゃ」と。

保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。

生活保護法第7条

あほみたいな話ですが、「相談に来ました」と「申請に来ました」とは違うんです。役所ではこういう微妙な言葉遣いを区別していることがあります(もちろん、窓口の職員が臨機応変に柔軟に対応してくれることもあります。しかし、そうでないこともありますので、要注意です)。