有給休暇の最大値

あなたは、有給休暇を使っていますか?かくいう私は勤務していた当時、全然使っていませんでした!(すみません;)

毎年MAX溜まっていました。当時は40日間でしたが、今はどうなんでしょう・・・?

調べてみました。

最大は35日

今、まっとうな会社なら繰り越せるのは20日ではなく15日のはずですね(入社から6年半年以上経過した人の場合かつ10日以上付与される人の場合。労働基準法39条2項)。

年休5日の取得義務が会社にありますから(同法同条7項)。

ということで、有給休暇のMAX値は35日です(繰り越せる分15日+その年度に新たに付与された分20日)。

しかし、さまざまな事情で5日の取得ができなかった場合、使わなかった有給休暇全部、20日あるなら20日全部を、翌年度に繰り越せます。

労働者には年休消化の義務はありませんからね、年休消化の権利があるだけです。まあ、5日を消化させなかった会社は怒られるでしょうけど。

ところで、なぜ20日なのでしょう?

最初の労働基準法

国立国会図書館のデジタルで確認したところ、一番最初の労働基準法第39条は次のような一文で始まっていました。

使用者は、一年間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した六労働日の有給休暇を与えなければならない。

法律学体系 第1部 第21(日本評論社1951年出版)168ページ(旧字体は筆者が適宜新字体に改めました。太字とハイライトは筆者)

今は10日です。当時は6日だったんですね。

つづいて、条文は次のように続きます。

使用者は、二年以上継続勤務した労働者に対しては、一年を超える継続勤務年数一年について、前項の休暇に一労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。但し、この場合において総日数が二十日を超える場合においては、その超える日数については有給休暇を与えることを要しない。

法律学体系 第1部 第21(日本評論社1951年出版)168ページ(旧字体は筆者が適宜新字体に改めました。太字とハイライトは筆者)

当初から、最大でも付与日数は20日だったんですね。しかし、今よりもっと長い年月がかかっていました。1年あたり1日しか増えないのであれば、15年勤務でやっと20日もらえることになります。現在は6年半年です。

当初なぜ6日だったかというと、1936年の国際労働会議での決議(年次有給休暇に関する勧告)(第47号)で最低6日だったからのようです。

ただいまの有給休暇の御質問でありますが、本法に取上げております、すなわち一年間勤續勤務いたしました者については、六勞働日の有給休暇を掲げているのでありますが、これは國際勞働會議におきまして採擇された標準であります。御承知のようにこの法律は大體あらゆる業態、あらゆる方面に適用される法律でありまするから、その最小限度を法律をもつて強制しているのでありまして、これ以上のものを、個々の状態においてもつと引上げて有給休暇をやられることは、これは望ましいことであります。この法律はこれをもつて強制する。いわゆる標準といたしましては、國際勞働會議に採擇された水準でやむを得ないのではなかろうか、また結構かと存じております。

第92回帝国議会 衆議院 労働基準法案委員会 第5号 昭和22年3月15日 伊藤卯四郎の発言(太字とハイライトは筆者)

これに対して、

しかし年次有給休暇は、六日では明らかに少ない。勤続者をゆうぐうするのもよいが、休暇は労働そのものの必要性からくるものであるから、最低は少くとも二週間または十二日でなければならない(ソ同盟は十二日)。

労働者と労働基準法 (組合ライブラリ ; 3)藤本武著 労働教育協会 昭和23年出版 96ページ(旧字体は筆者が適宜新字体に改めましたが、送り仮名はそのままです)

という学者の批判もあったようです。

昭和62年の法改正

その後、昭和62年に法改正があり、労働基準法39条1項は次のように変わりました。

使用者は、一年間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

労働基準法実務便覧 : 管理監督者必携 平成元年6月1日現在 労働法令協会1989年7月出版84ページ

ここでようやく10日に引き上げられたんですね(※)。でもまだ1年に1日ずつしか加算されません。

なお、このときに比例付与方式も導入されました。

※一度に10日に引き上げられたのではなく、労働者数300人以下の事業場では段階的に引き上げる(6日→8日→10日)経過措置がありました(現在の条数ですと134条、当時は133条に記載あり)。

平成5年の法改正

平成5年の法改正では、労働基準法39条1項は次のように変わりました。

使用者は、その雇い入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

労働基準法39条1項(太字とハイライトは筆者)

要するに、現在の条文といっしょです。

これまで1年だったのを6ヵ月に短縮したんですね。

これは、ILOの132号年次有給休暇の「有給休暇を受ける資格取得のための最低勤務期間は6ヶ月を超えてはならない。」を意識したものだと思われます。といっても日本は批准していませんが。

ところが、このときもまだ加算される日数は1年ごとに1日だけでした。したがって、最大の20日付与されるまでには、入社から14年半勤務しないといけない計算でした。

その後の法改正

その後、平成10年の法改正で、

付与日数を二年六か月を超える継続勤務期間一年ごとに二日ずつ増加させた日数とした。

令和3年版労働基準法 上 厚生労働省労働基準局編 620ページ

ということですので、平成10年になってようやく現在の形(6年半経過で20日付与)になったようです。

まとめ

年次有給休暇の付与日数は、法制定当初から最大20日を想定していたことが分かりました。しかし、その最大数に至るまでの年数には長短の変遷があったことも分かって興味深かったです。

結局、なぜ20日になったのかについては分かりませんでした。ILOが3週間としているからでしょうか?3×7=21で、きりよく20にしたとか・・・・?

そもそも最初から、20日についてはあまり議論されていなかったようですし、実際に有給休暇を使ったかどうかの統計を見ると、1年間に20日なんて全く使われていないのでした。年5日取得義務が施行された今ですら、平均10日です(令和3年就労条件総合調査の概要)。