定年と継続雇用制度

先日、有期雇用契約者の”定年”!?という記事を書きました。

今日は期間に定めのある雇用ではなく、期間の定めのない雇用における定年について書きます。

年齢差別

諸外国では年齢差別が禁止されているところも多く、定年制自体が存在しない国もあるようです。

定年年齢は万国共通?日本と海外の定年制の違い

https://www.vision-net.co.jp/morebiz/retirement

ところが日本では秋北バス事件(昭和43年12月25日最高裁)で最高裁が定年制に一定の合理性(人事の刷新)を認めて以来、広く定年制が認められてきました。

私も個人的に定年制はあった方がよいと考えています。理由は、最高裁と同じで人事刷新によいと思うからです。

ところが、その日本でもなんでもかんでも定年制をよしとしている訳ではなく、政策的に一定の制限がかかっています。

60歳未満の定年

60歳未満の定年は現在では認められていません(高年齢者雇用安定法第8条)。もし”55歳を定年とする”といった定めの就業規則が存在したら、その部分については無効となり、60歳が定年となります。

ところで、60歳定年と言いましても、いろいろな定年退職日が考えられます。

  1. 満60歳の誕生日の前日(60歳年齢到達日)
  2. 満60歳の誕生日
  3. 満60歳の誕生日の属する月の末日
  4. 満60歳の誕生日の属する年度の末日
  5. 満60歳の誕生日後最初の給料締日

等々。これらを決めるのは会社の自由です。

しかし、次のような規定は無効です。

  1. 満60歳の誕生日の属する月の前月末日

理由は、60歳に到達していないからです。

65歳未満の定年

60歳以上65歳未満の定年を定める場合、次の三つの措置(高齢者雇用確保措置と言います)のいずれかをとる必要があります(同法9条)。

  1. 定年の引き上げ
  2. 継続雇用制度
  3. 定年の廃止

一番多いのが2.継続雇用制度です。

この点、厚生労働省が公表しているモデル就業規則(令和4年11月版)では次のような例を挙げています。

(定年等) 
第49条  労働者の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満65歳までこれを継続雇用する。
3 前項の規定に基づく継続雇用の満了後に、引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者のうち、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれを継続雇用する。
(1)過去○年間の人事考課が○以上である者
(2)過去○年間の出勤率が○%以上である者
(3)過去○年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上、支障がないと認められた者

厚生労働省モデル就業規則令和4年11月版 定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例(満65歳以降は対象者基準あり)の例

この例では、60歳定年後、再雇用を希望した場合65歳までは継続雇用されます。このときの雇用契約期間は最長で5年です(労働基準法第14条)。多くの企業で有期雇用契約にして再雇用していると思います。

さらにこの例では、65歳以降も雇用継続を希望し、ある一定の基準に該当した場合は最長70歳まで雇用継続できます。

さて、ここで問題となるのが労働契約法第18条の、有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換です。

有期雇用特例措置法

この例では、無期転換権が発生したときに労契法第18条にもとづき申し出た場合、無期転換できるでしょうか?

答えは、Yes。60歳から65歳まで有期雇用を継続しますと、5年経過しますので、次の契約更新後(つまり6年目)に無期転換権が発生します。この段階でこの労働者が無期転換を申し出たら、会社は拒めません。

しかし、そうすると、人事刷新のはずだった定年制の趣旨にもとります。

ということで、有期雇用特例措置法という法律の出番です。

有期特措法については以前記事にしました。

あまり多くないケースではありますが、有期特措法の第2種計画認定申請を忘れていると、継続雇用した有期雇用労働者に無期転換の申し立てをされても拒めませんので、該当する企業様におかれましては一度就業規則等ご確認を。

上限が65歳の場合でも

定年を60歳、継続雇用制度の上限を65歳と定めている企業も多いと思います。

こういう場合は、理論上は有期特措法の第2種計画認定申請は不要です。

しかし、実際には広く届出を受け付けているようです(群馬労働局に確認)。

理由は、たとえ就業規則等で65歳と定めていても、個別の労働者との契約で、特別に65歳以降も延長して契約する場合が考えられるからです。

そういうケースにおいて、第2種計画認定申請を出していない場合、やはり無期転換の申出があったら拒めません

ということで、今実際に対象者がいなくても、将来のリスクを減らすために申請を出すのも一つの手です。

なお、第2種計画認定申請は1度提出し、認定を受ければ、その後内容に変更がない限り再度の申請は不要です。