モデル就業規則ではなぜだめなんですか?

Q モデル就業規則ではなぜだめなんですか?

厚生労働省はモデル就業規則を公開しています。これをベースにわが社の就業規則を作ろうと思います。社会保険労務士?高いからなーー。なんで社会保険労務士に頼む必要があるんですか?モデル就業規則で十分ではないのですか?

ある会社の社長さんから言われた言葉です。

就業規則(いらすとやさんから)

これに対する私の回答は以下になります。

A モデル就業規則では足りなかったり、過剰だったりするからです。

不足する事項

例えば、内定取消事由について、モデル就業規則は明記していません。しかし、内定取消は解雇と同じですから、もし内定取消をするのであれば根拠を明記しておく必要があります。新卒採用でどのような人材が来るかは予測できません。いざそのときになって困らないためにも、あらかじめ内定取消事由を列挙しておくのがよいでしょう。

マイナンバーの取扱いについても、モデル就業規則は明記していません。従業員のマイナンバーを取得して税当局に届け出るのは会社の義務ですが、取得の際、マイナンバーを何に利用するのか明示しなければなりません。これを一人一人にやるのは大変ですが、就業規則に定めておけば、包括的に明示したことになります。

これ以外にも就業規則にあらかじめ明記しておいた方がよい事項でありながら、厚生労働省のモデル就業規則では記載されていない事項は多々あります。

パートタイマーに関する事項

モデル就業規則では「パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。」としていながら、その別途定めたパートタイマー用の就業規則は全然別のページに公開されており、一式そろった状態にはなっていません。

正社員の就業規則だけ作成し、パートタイマーの分を作成しないとどうなるかというと、モデル就業規則では「前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。」とありますので、結局正社員もパートタイマーも同じ就業規則が適用となってしまうのです。

パートタイマーなのに正社員と同等の条件なのは同一労働同一賃金の観点では大変喜ばしいことですが、賞与なしで雇ったはずなのに、就業規則では賞与ありとなっていたために、労働契約法第12条が適用となって、パートタイマーにも賞与が必要・・・・なんて事態が起きてしまいます。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

労働契約法第12条

場合によっては過剰となる事項

一方、退職金については、モデル就業規則は「支給する」としています。御社において退職金を支給することにしているならよいのですが、もし支給しないこととしているのであれば、この部分については過剰な内容となっていますので、「支給しない」と書き換える必要があります。

もしそのままにしていたら・・・やはり労働契約法第12条が適用となって、就業規則違反の労働契約についてはその部分については無効となり、この場合無効となった部分については就業規則に定める基準によることとなりますから、退職金なしで雇ったはずの労働者なのに、退職後退職金を請求された!なんてトラブルが起きてしまうのです。

就業規則は専門家にご依頼を

就業規則は御社に合ったものを作成しなければ意味がありません。

モデル就業規則をベースに作成するのは結構ですが、そのままでは過不足が必ずありますので、ぜひ御社に合うようカスタマイズをしてください。

その際、何が過剰で何が不足しているか分からなければ、専門家にお問い合わせになるが一番だと思います。

社会保険労務士は就業規則については専門家ですから、ぜひご利用ください。

なお、幣事務所でも就業規則の作成、修正を承っております。