食事手当と残業代
- [記事公開]2023.07.31[最終更新]2023.08.01
- 労務相談
食事手当を支給している会社で残業代の支払いもれがありました。
労働時間は原則1週40時間、1日8時間までです。これを超えて労働させる場合、使用者は割増賃金を支払う必要があります。
割増賃金は通常の賃金の2割5分増し以上で計算しなければなりません。この通常の賃金(割増賃金の基礎となる賃金)は、労働基準法で次のように定められています。
第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
労働基準法37条5項
「その他厚生労働省令で定める」の部分は、労働基準法施行規則21条に定めがあります。
法第37条第5項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第4項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
労働基準法施行規則21条
一 別居手当
二 子女教育手当
三 住宅手当
四 臨時に支払われた賃金
五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらは例示ではなく限定列挙されたものである(昭和63年7月14日最高裁第一小法廷 小里機材事件 昭和63(オ)267号)ので、これらに該当しない手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入しないといけません。
余談ですが、社労士受験生時代はこれを「かつべしりーち」と覚えたものでした。法改正があって住宅手当が追加されてから(平成11年)は、「かつべしりーち、住宅」とイマイチ語呂が悪くなってしまいましたが・・・。
さて、ここで問題にしたいのが、食事手当です。
ある企業では食堂の昼食提供に1日200円の手当を出していました。この200円は実際に食堂で食事をとってもとらなくてももらえるものです。賃金規程や雇用契約書でも食事手当が明記されていました。
ところが、残業手当の基礎となる単価には、この食事手当が入っていませんでした。
賃金チェックをしていた私が気が付いて、その会社の担当者さんに説明すると、「なんで!?関係ないじゃん!!」とびっくりされました。
そうですよね・・・食事手当と残業代が何の関係があるのかと普通思いますよね。
しかし、労働に関係するものは何でも割増賃金の基礎となる賃金に入れようという精神なんだと思います。ただし、個人の労働とは関係のないもの(家族手当や通勤手当等)は入れません。
という訳で、全然関係がないと思っていても、実は残業代の単価に入れないといけないというものがありますので、気が付かないうちに未払賃金が発生しているなんてことも…。
心配でしたら、信頼できる社会保険労務士にご相談ください。
-
前の記事
代替休暇の意向確認 2023.07.28
-
次の記事
車検で考えた優先度と値下げ 2023.08.01