パート・アルバイトを有期雇用契約にするデメリット

  • [記事公開]2022.08.02[最終更新]2023.05.11
  • 労務相談

解決社労士さんが「会社が有期労働契約にしたがる理由」という動画を公開されていて、興味深く視聴しました。今まさに私が有期雇用契約でアルバイトしているからです。

会社が有期労働契約にしたがる理由 – 解決社労士さんのYoutubeチャンネル




帰宅途中の人々(Random Picturesより)

解決社労士さんの動画の内容

解決社労士さんの動画の趣旨は、”かつてはパートアルバイトを有期雇用契約にし、雇用の調整弁として使うことで会社にメリットがあったが、労働契約法が制定され、ネットでの情報入手が容易になった現在では、有期雇用契約に対する期間途中での解雇が困難であること、また、期間満了に伴う雇止めも場合によっては無効となることもあることが知れ渡っており、以前のようなメリットはない”といった内容でした。

この動画を見て、ちょうど私が最近感じていた、有期雇用のデメリットについて書いておこうと思います。

有期雇用契約のデメリット【私の場合】

私は今社労士業のかたわら、某コンビニで早朝アルバイトのシフトに入っています。

有期雇用契約で、期間は2022年9月15日までとなっております。

雇用契約書の一部です。雇用終了日が2022/9/15となっています。

契約更改の交渉は8月15日からですから、まだ私が契約を更新できるかどうか分かりません。

人の元で働くことも嫌いではないのですが・・・。

これを、雇っている側から考えると、労働者が契約を更新しない可能性があるということですから、新たな人材探しをする必要が出てくるということです。

もし私の契約が更新されない場合、会社にしてみれば新たな人探しが必要となります。

私の方も、万が一契約が更新されなかった場合に備えて、職探しを始めています。

コンビニ業界は人手不足が深刻ですから、おそらく更新されるとは思うのです。もし更新されるなら、最初から契約期間など設けず、無期雇用にしてくれればよかったのになと思います。不毛な職探しをしなくて済みますし。

その他にも、私が今持っているメンタリティをご紹介すると・・・

帰属意識が希薄になっている

有期雇用契約なので、9月15日になったらおさらば!のつもりで働いています。ですから、お店に対する愛着、帰属意識が低いです。

毎朝「誓いの言葉」という社訓のようなものを声に出して読み上げてから働くのですが、完全に面従腹背になっています^^;ただ、読み上げているだけです。心は全くこもっていません。

しかし、これは仕方ないと思います。有期雇用契約者に、会社に帰属意識を持ってもらおうとする会社の方が虫が良すぎます。もちろん契約期間中は与えられた義務を果たしますが、有期雇用契約者の場合、会社に対する忠誠心も限定的となることを、会社は自覚すべきです。

新しい仕事を覚える気力が出ない

どうせ9月15日で終わりと思うと、新たな仕事を覚える意欲に乏しいです。

例えば、コーヒーサーバのミルク交換や、ウォークインのドリンク補充、冷食の検品作業といった仕事は、早朝シフトに入る従業員なら一通りマスターしておいてもよい仕事なのですが、一緒に仕事をする先輩従業員におまかせきりです。先輩従業員がやった方が早いからというのが一番の理由ですが、私が覚える気力がないというのも理由の一つです。

最初の頃はもう少し意欲的でしたが、9月15日が近づくにつれ、どんどんやる気を失いました。「どうせ覚えてもすぐ使わないノウハウになるなら、覚えてもな・・・」というメンタリティでいます^^;

会社に対する失望感

採用時の面接で、「社労士として開業しても、軌道に乗るまで数年かかる。その間無収入状態は避けたい。軌道に乗るまで何年かかるか分からないが、それまではお世話になりたい」という私の希望を述べました。

それに対して、会社は人手不足なので何年でも構わないという返事でしたから、当然無期雇用契約になるものと思っていました。

ところが契約書は有期雇用契約。

この時点での私の気持ちを一言で言うと、「がっかり」です。

有期雇用契約にするのは、会社にとってはメリットがあっても、労働者にとってはメリットがないですよね?期間満了したら次の仕事を探さないといけない訳で、なんで?と思いましたが、採用されたいので黙っていました。たとえ有期でも、その間働ける場があるというのはありがたいことですから!

職探しは辛いです。ちょうどそのときまでに他社から不採用の通知をもらっており、落ち込んでいました。面接まで行って不採用というのを繰り返していると、とにかく採用されたいという気持ちでいっぱいになり、少しくらい不利な条件でも飲んでしまうものなのだなあと思いました。

私は社会保険労務士として主に企業側の仕事をすることが多いのですが、労働者側のメンタリティというものを知っておいて損はないのです。だから、こういう気持ちは大事にとっておいて、覚えておこうと思いました(そして今ブログに書いて役に立てることができました。満足です^^)

有期雇用契約にするメリット

それでもパートとアルバイトを有期雇用契約にするのには、会社にメリットがない訳ではないです。

例えば、解決社労士さんが紹介していたように、業務の繁閑がはっきりしている場合です。

昔、仙台にいたとき、仙台夏まつりという盛大なお祭りがありまして(今もあるのでしょうか?)、私のバイト先の居酒屋では、その夏まつり前1か月だけ、有期雇用契約のアルバイトをたくさん雇っていました。夏まつりでは七夕飾りを各店こぞって自主制作するのですが、その制作要員としてです。

とにかく夏祭りは盛大でして、どれだけすごい七夕飾りを作るかが商店街の各店の勝負!みたいなところがありましたから、アルバイトで働く大学生たちもはりきっていました。1か月だけですが、働く大学生にとってはとてもよい臨時収入となっていましたし、お店にしても、最も忙しい1か月だけの有期雇用契約で働いてもらえればよく、他の月は通常の人員で人件費を抑えたい訳で、こういう場合に有期雇用契約というのにはメリットがあると思います。

それから、試用期間として有期雇用契約を利用する場合です。

最初に有期雇用契約で3か月ほど働いてもらい、適性を見極め、優秀な人は契約更新の際正社員として採用し、無期転換とするというような使い方をしている企業があります。

この使い方は少し注意が必要です。実際の裁判例で、有期雇用を試用期間と同じものとして活用している場合に有期雇用として認められず、通常の解雇と同じとみなされたケースがあります。

募集の段階で正社員として採用すると期待させておきながら、試用期間は有期雇用として採用すると、こういうことになります。

有期雇用契約で募集すると人が集まらないから、正社員をちらつかせて募集する会社は、ずるいと思います。有期雇用契約の3か月で人材を見極め、適性がない場合には雇止めをするのであれば、募集の段階から有期雇用契約で募集するべきです。もちろん有期雇用の募集では人が集まらないでしょうが、そこは仕方がないです。両方いいことはありません。

また、将来キャリアアップ助成金の正社員転換コースを狙って、あえて有期雇用契約で採用するという使い方をしている企業さんもいましたが、制度の趣旨から言ってこういう助成金の使い方はやめましょう。不正を疑われかねません。

まとめ

結局、私の結論は、「アルバイト・パートを有期雇用契約で採用することにメリットは少ない」です。

デメリットの方が多いと思います。

有期雇用契約にすると、その労働者は帰属意識が乏しくなり、勤労意欲が下がり、会社に対する忠誠心も限定的となります。

人手不足で苦しむ企業であれば、安易に有期雇用契約はしない方がよいと思います。

[20220901追記]有期雇用契約にした場合の、労働者側のメリットとしては、辞めやすいことが挙げられます。

実際私は2022年9月15日をもってアルバイトの有期雇用契約を満了することになりました(更新はしないことになりました)。

これは、逆に言うと会社側にすれば、せっかく育てたアルバイトに辞められやすいというデメリットとなります。

やはりパート・アルバイトを有期雇用契約にするのには、人手不足の会社であればなおさら、メリットはないようです。