深夜労働を1日しただけでも健康診断は半年に1回なのか

深夜労働を労働者にさせている事業者は、健康診断を6ヵ月以内ごとに1回実施する義務があります(安衛法66条2項、安衛則13条1項3号、安衛則45条)。

厚生労働省の健康診断関連のリーフレット。

深夜労働は労働者にとって負担が大きく、体調不良になりやすいとされているからです。では、そもそも深夜労働とはなんでしょうか。

深夜労働とは

夜10時以降、朝5時までの間に働いた場合は、深夜業(深夜労働)といいます。この根拠は古く、昭和23年10月1日に出された”基発1456号”にて次のように定義されています、

「深夜業を含む業務」とは業務の常態として深夜業を1週1回以上又は1月に4回以上行う業務をいう。

昭和23.10.1基発1456号

(余談ですが、この古い通達を今回かなり探しましたが、見つけることができませんでした><あちこちのWebに引用はされているのですが、原本が見つかりません)

長さは関係なく、たった1分だけでも夜10時を過ぎていたら、その1分は深夜労働の扱いとなります。深夜労働をさせたら事業者は、通常の賃金の25%以上を割り増しで支払う必要があります(労働基準法37条4項)。

また、18歳未満は深夜労働をさせてはいけません(一部例外あり)。妊産婦が請求した場合にも、深夜労働をさせることはできません。

深夜労働の頻度

では、深夜労働を1分だけでもさせたら即健康診断を半年に1回実施しないといけないかというと、そうではありません。

実はこの点、労働安全衛生法に明確な記述がありません。しかし、安衛規則第50条の2(自発的健康診断)に「常時使用され、同条の自ら受けた健康診断を受けた日前6月間を平均して1月当たり4回以上同条の深夜業に従事」と定められていることから、同じ法令上ですし同様の基準だと考えられています。

注意したいのは、先の昭和23.10.1基発1456号「業務の常態として深夜業を1週1回以上または1月に4回以上」と、この安衛則50条の2「健康診断を受けた日前6月間を平均して1月当たり4回以上」とに、微妙にニュアンスが異なる点です。

1回とは

1回とはどれくらい働いた場合を言うのかというと、すでに書きましたように、1分でも22:00~翌朝5:00までの間に働いたら1回とカウントします。

では昼間の仕事が長引いて、夜10時過ぎても仕事が終わらず、日付をまたいだ翌朝3時に終わった場合は2回とカウントするのか?というと、これは1回でよいです。

常態化か

もともとは夕方6時に終わるはずだった仕事が長引いて、1週間に1回程度夜10時を過ぎてしまうことが続き、結果的に1か月間だけ4回深夜残業があったというような場合は、これはもともとは6時までと想定されていた業務が長引き、結果的に深夜労働をさせることになっただけですから、半年に1回の健康診断をする義務まではないと考えます(業務の常態とは言えないので)。

しかし、1か月だけで終わらず、何か月も続くようでしたら、そもそも36協定を順守できているのか?という疑問はさておき、半年に1回の健康診断を実施した方がよいでしょうね。業務の常態化を意図したものではないにせよ、結果的に常態化しているからです。労働者の健康を守るという意味でも、労働者が自ら健康診断をするのを待たず、事業者が自ら過去6ヵ月の労働時間をチェックし、深夜労働カウントが24回以上ある労働者には健康診断を受けさせるといった運用がベターだと思います(そもそもそんなに深夜労働をさせないのがベスト)。

「常時使用され」だと、アルバイトやパートは入らないのか

24時間営業のコンビニなどで、深夜時間帯に最初からシフトが入っている従業員の場合は、どうでしょう?安衛則50条の2では「常時使用」とあります。常時使用とは

  • ①(深夜業の場合)6か月以上継続して雇用
  • ②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上

以上2要件を備えるものを言うという行政指導が出ております(平成19年10月1日短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について)から、たとえば労働の頻度が1週間に1回深夜だけというアルバイトに対しては、6か月以内の健康診断は実施しなくてもよいのでしょうか?

これに対しては、安衛則45条で有害業務に「常時従事する労働者」としています(太字筆者)ので、有害業務に対する取扱いはかなり厳しめであると解釈できます。つまり、有害業務である深夜労働に常時従事する労働者に対しては、たとえその事業場で常時使用する労働者の要件を満たしていなくても、6か月以内の健康診断は実施すべきであるということです。

前回の健康診断から間が空いてしまってもよいか

健康診断の予約を労働者に自分でさせている事業者の場合、前回実施した健康診断から間が空いてしまうということがあります。

業務の都合がありますから、そうそう都合よく6か月以内に実施できるというものではない、7カ月とか8カ月とか、前回の実施から間が空いてもよいか?というご質問をいただくことがあります。

これに対しては、事業者の義務は果たしていないでしょうねとまずお答えしています。

安衛則45条では「6か月以内ごとに1回」と定めており、半年に1回とは定めていません。要するに、前回の実施が4月1日だったなら、次の実施は10月1日までに実施しないといけないと解釈できるのです。

しかし、実際問題、きっちり6ヵ月以内にできる場合は少ないです。医療機関の都合もありますし、だいたい6か月以内ということは、初回が4月1日→次が9月30日→3月30日→9月29日・・・と1日ずつ早まっていった結果、40年間で80回でなく81回実施になってしまう!なんてことも考えられます。そこまでやるの!?というと、私個人としては懐疑的でして、要はその労働者の健康を守ることができる程度の頻度で実施していればよいと考えます。

ただ、労働基準監督署が臨検する際は、安衛則50条の2を根拠としてくるでしょうから、あまりにも間が空くのはよくないでしょう。