就業規則が有効となるためには

就業規則が有効となるためには、「労基署に届け出ればいいんでしょ!」と思っている企業さんがいらっしゃるようなんですが、違います。

就業規則が有効となるためには、周知が必要です。

周知というのは従業員が一人一人、一条ずつ理解していることを意味するのではなく、従業員の方が就業規則を見ようと思えば見ることができる状態にしておくことです。

例えば、みんなが出入りできる食堂の棚に置いておくとか。

みんなが毎日ハンコを押す出勤簿の隣に置いておくとか、

みんながアクセスできるファイルサーバの共有フォルダに置いておくとか、

といったことです。

そういう状態にしておけば周知したとみなされます。なお、実際に従業員の方が見るかどうかまでは使用者に義務付けられていません。

しかし、全く見ることができない場所、例えば、

  • 社長しか出入りできない部屋の書棚に入れておく
  • 鍵のかかった金庫にしまっておく
  • 庶務経理の担当者の引き出しに入れておく

そういう状態にしてあると、周知されていないと見なされ、就業規則は無効となります。

労基署に届け出ることは、罰則付きで使用者に義務があるだけでして、就業規則が有効となるか無効となるかという問題とは別問題です。

私が傍聴した裁判でも就業規則の有効無効が争われた事例がありました。

その会社では就業規則をファイルサーバに置いておいたのですが、

  • 版数がいくつもあってどれが最新か分からない
  • 現場仕事の人は常日頃ファイルサーバにアクセスすること自体が少なく、そもそも就業規則がファイルサーバにあること自体を知らなかった
  • 証人(現場仕事の従業員)を呼んで、就業規則がどこにあるか知っているか質問したところ「知らない」と答えた

といった問題点がありましたが、最終的には会社側の言い分(就業規則は周知していた)が認められました。

というのも、現場仕事の人たちは日常的にファイルサーバにアクセスする機会は少なかったのですが、アクセスしようと思えばアクセスすることができる状態であったこと、版数がいくつもあってどれが最新か分かりにくかったのですが、分かりにくいだけで最新版はちゃんとその中にあったこと、証人の一人は就業規則の場所を知りませんでしたが他の従業員の方は知っていたこと・・・などの理由からでした。